積水化学工業は、国内の主要情報システムについては自社で開発・運用している。現在は事業のグローバル化にともない、ITのグローバル整備を推進している最中だ。日本で活用しているシステムを展開するか、現在現地で運用しているものを継続利用するか、新たにパッケージソフトウェアを採用するか。こうしたグローバルIT戦略の検討課題について、日本企業が見落としてはいけないポイントは何か? 同社コーポレート 情報システムグループ長 寺嶋一郎氏に聞いた。

地域のニーズに合わせたシステムで、
グローバルITの整備進める

――現在積水化学工業のIT部門で取り組んでいる、一番大きなテーマは何でしょうか?

自社開発のシステム軸にグローバルITの整備を進める積水化学工業<br />欧米流パッケージ信奉に警鐘「自社にある『日本的経営』の強みを知ることが先決」てらじま・いちろう/積水化学工業株式会社 コーポレート 情報システムグループ長。1955年生まれ。79年積水化学工業入社。生産技術部で生産管理システム構築を担当した後、米国マサチューセッツ工科大学留学。情報子会社・株式会社アイザック設立に参画し、人口知能を応用した工業化住宅のシステム化に従事。2000年に積水化学工業の情報システム部長。組織改編により07年4月から現職。

 当社はカンパニー制をとっており、各事業のITシステムはそれぞれのカンパニーのIT部門で担当し、私たちコーポレート(本社)のIT部門では、基幹システムなど、複数カンパニーで活用する仕組みやITガバナンスなどを担当するという具合に役割分担をしています。

 コーポレート側IT部門の最大のテーマは、グローバルのITシステムをどうするかです。

 これまで、グローバルの事業は「地産地消」が中心だったこともあり、セキュリティ監査などの最低限の対応しかしていませんでした。それが最近は、原料価格や為替の変動の事業への影響が大きく、連結でグローバルに情報をリアルタイムで見る必要性が高まってきました。毎日どれだけの売り上げが立っているのかという情報に加え、グローバル全体で見てどこで生産するのが一番いいのかを見たいという、サプライチェーン上のニーズも高まっています。

 国内では分社化が進んでおり、すべての関連会社を合わせ、2万人弱の従業員を抱えています。バラバラのシステムを使っていたのを、2000年ごろから情報共有や経営の「見える化」を目的として、共通の会計や受発注のシステムを構築し、情報をデータウェアハウスに集めて経営情報として横断的に可視化しました。まったく同じ仕組みを使うかは別として、海外でも同じように、情報共有や経営の見える化の仕組みを作る必要があると考えています。