19日のG8先進国首脳会議で「財政の健全化と経済の成長の両方を追求」との見解が世界に示され、厳しい緊縮財政に軸足を置いたメルケル路線に対し、緩やかな緊縮財政と経済成長を訴え続けたオランド氏の路線に、世界のお墨付きが加わりました。

「野心的な欧州づくり」を公約し大統領に就任したオランド氏は、これまで欧州に欠けていたビジョン(欧州は一体どこへ向かうのか)を示すためのリーダーシップを発揮できるか、そして、そのビジョンに、今後避けて通れないであろう「域内のリストラ(一部加盟国の離脱含む)」と「経済統合から政治統合へ(国家連合から欧州連邦へ)」が組み込まれ、欧州に新たな歴史が刻まれるのかが注目されます。

ギリシャ・スペイン・伊から独・英へ
欧州全域に拡大する「反緊縮」の波

 出口が見えない財政危機、増加しつづける失業者、国際社会での経済競争力と相対的地位の低下、欧州域内格差の拡大…欧州市民は、日を追うごとに自信を失い、将来への不安と焦りを募らせています。これを反映し、ビジョンなき緊縮財政に対する市民の反発が欧州全域に連鎖的に拡大し続けています。

 5月に入ってからも、反緊縮財政を掲げる急進左派連合の台頭により38年続いた2大政党による政治が終わり、ユーロ離脱か残留かの瀬戸際に立つギリシャや、ユーロ圏最大の失業率(若年層で50%超)に達するスペインでは、緊縮財政に反対する10万人規模のデモが勃発。イタリアでも、昨年から頻発していた反緊縮デモが日増しに大規模化し、更に社会不安に乗じた無政府主義者によるテロ活動も相次いで勃発しています。

 こうした反緊縮の動きは、南欧諸国から徐々に北上しています。ドイツでは、来年秋の連邦議会選の前哨戦とも言われる、国内最大の州ノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙で、欧州債務問題の解決に向けて成長戦略の重要性を訴える中道左派の社会民主党(SPD)が、厳しい財政規律を訴えるメルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)を破りました。