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連載経済小説 東京崩壊
【第30回】 2012年5月23日
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高嶋哲夫 [作家]

ゴッド・タイム

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第3章

 ロバートの言う方に目を向けると、長身の男と頭ひとつ小さい男が、並んでフロント前に立っている。

 「長身の方はジョン・ハンター。ユニバーサル・ファンドのCEOだろ」

 「俺が教えたんだったな、ユニバーサル・ファンドについては。多少は調べたんだな。じゃ、右の男は」

 「初めて見る顔だ」

 「ユニバーサル・ファンド最高戦略責任者のアルバート・ロッジ。36才だ。MIT出身の宇宙物理学者だったんだが、宇宙の神秘よりマネーの魅力にとりつかれたらしい。彼が今度のプロジェクトの指揮を執る。彼らは2週間ほど前から、このホテルに泊っている。当然、地震の時にもいた」

 空港で買ったと言って、ロバートは新聞を差し出した。日本で出ている英字新聞だ。

〈日本を逃げ出す外国人。東京直下型地震動の恐怖〉の見出しが目に飛び込んでくる。地震の後、東京在住の外国人約7000人が、成田国際空港と羽田に押しかけて出国し、約2万人が関西方面に避難した、とある。

 「一般的に言うと、アメリカ東部の人間は地震に慣れていない。東部はほとんど地震がないんだ。だからちょっとの地震でも震え上がり、逃げ出す。ハンターはニューヨーク、ロッジはボストン出身だ。典型的な東海岸の人間だ。ところが彼らと彼らが連れてきたスタッフは、地震の後も日本、それも東京を離れる気配はない」

 「東京に大した被害がないことが分かったからだ。原発もないし、大きな建物被害もない。前の震災とは全く違う」

 このホテルにいる限り、揺れもさほど感じなかったのだろう。他の高層ビルと同様に、免震工法がとられている。揺れは4分の1以下に抑えられる。さらに、停電も断水も経験していないはずだ。すべてホテルの予備設備で、節電、節水程度で済んでいるはずだ。

 「いや、基本的には同じだ。お前たち日本人は、危機意識に欠けている。東日本大震災の原発事故でも、原発周辺にのんびり居続けてるのは日本人だけだった」

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

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「連載経済小説 東京崩壊」

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