JALの副操縦士から、乗務前にアルコールが検知され、実刑判決が言い渡された。これを受けてJALは懇親会・忘年会での飲酒自粛を通知した。全面禁止は問題解決に役立つのか。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

ひとたび事件が起きると
全面禁止する風潮がある

JALでは、パイロットの飲酒問題が、全社員の飲酒自粛通達につながりました。今回のJALのように、不祥事が起きるたびに全社一斉に対策を取らせる、というやり方は、経営側からすればラクだが、現場には大きな問題を残す

 ロンドン―羽田便に乗務予定だったJALの副操縦士から、基準の10倍のアルコールが検出された事件で、禁固10ヵ月の実刑判決が言い渡された。これを受けて、JALは社内の懇親会・忘年会の飲酒自粛を通達したと報道されている。

 出社した社員から酒の匂いがプンプンしているなどトンデモない事態だ。ましてや乗客の命を預かる乗務員が飲酒していたと思うと、ゾッとして言葉がない。しかし、全社員に飲酒を自粛させれば、再発は防止できるのだろうか。1人が起こしたこの事件で、全社員に禁酒令を発令するという、いわば連帯責任を負わせれば、この問題は解決するのだろうか。

 これに限らず、ひとたび事件や不測の事態が起きると、全員の行動を規制するという方法は、ビジネスの場面でよくとられる。2016年、東京都庁は超過勤務を減らすために、20時退庁、全庁一斉消灯を開始した。また、台風が接近して、公共交通機関に影響が出そうになると、通勤災害を防ぐために人事部が社員に「本日は、○時で業務終了して帰宅してください」と全社員に通知する会社も少なくない。

 先日見舞いに訪れた病院では、インフルエンザ感染防止のため、家族であろうが誰であろうが例外なく、患者の病室に入ることを数日間であるが全面禁止していた。その間、見舞品はおろか入院患者の着替えなども、病院の受付でスタッフに手渡しをするというルールである。

 もちろん、乗務員の飲酒も、超過勤務による労災事故も、はたまた台風による通勤災害、インフルエンザの蔓延も、きわめて深刻な、あってはならない問題だ。しかし、それらを未然に防止するためには、飲酒の全社員自粛、オフィスの一斉消灯、社員の一斉帰宅、病棟への入室禁止という全面禁止令しか方法がないのだろうか。