株式レポート
5月22日 17時0分
マネックス証券

ギリシャ選挙待ち以外のシナリオ〜頭の体操〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・昨晩(5月21日)のNY株式市場は久しぶりに下げ止まり、ダウ平均は12,500ドルまで反発した。ギリシャのユーロ離脱懸念が浮上して、急ピッチの下落が続いたが、とりあえず一服した。昨日の反発の材料としては、中国の景気刺激策への期待やギリシャの世論調査が挙げられているが、割安感から自律的に買い戻しが入った面が大きいだろう。


・ゴールデンウィーク明けから、世界的に株式市場は大きく調整し、多くの地域の株価はほぼ年初の水準近くまで調整したが、2010、11年に続いて、3年連続でSell in Mayが実現したことになる。

・ギリシャ問題が、株式市場下落のきっかけになった点では、現在の調整は2年前の2010年のケースに表面上似ている。なお当時、米国株は、5・6月の約2ヶ月で高値から13.6%下落した(グラフ参照)。ギリシャへの支援策、ECBによる国債買取制度導入などで懸念は収束、この問題が世界経済に及ぼした影響はほとんどなかった。もちろん、言うまでもないが、当時と現在では状況が異なる面が多く、単純比較はできない。


・まず、ギリシャの早期のユーロ離脱が無視できないシナリオとなり、当時より不確実性は高い。仮にギリシャのユーロ離脱が現実となれば、同国経済が大混乱に陥ることはメディアなどで連日伝えられている通りである。将来的にギリシャがユーロから離脱するとしても、現在は、欧州各国の金融システムの動揺など副作用が大きい。ギリシャの政局、そしてドイツ・フランスの政治判断(5月21日レポート)など不透明な部分も残るが、ギリシャの早期ユーロ離脱は「リスクシナリオ」だと考えている(5月14日レポート)。

・仮に、「ユーロ離脱」を軸に今後のシナリオを考えるとすれば、離脱リスク後退によって、年初来の水準まで調整した株は割安、ということになる。その帰趨が見えてくる、ギリシャ再選挙(6月半ば)まで「様子見」というのが結論になる。

・一方、頭の体操だが、ギリシャ政局やユーロ体制を巡る思惑とは別の点で、市場の状態が変わる展開を考えたい。いくつかシナリオがあるが、一つは問題の本質が、ギリシャのユーロ離脱ではなく、欧州の金融システムへの疑念に移ることである。ユーロ離脱が現実味を増しギリシャの銀行から預金が流出、その連想でスペインの銀行預金の流出が増えているとの観測がある。本日の日経新聞でもそうした懸念が含まれている。

・欧州問題の本質が、欧州の金融システム問題であれば、ギリシャの再選挙を待たずに事態が大きく動くこともあり得る。そうであれば、水面下で預金流出が進むなど、銀行経営存続のリスクに対する懸念が強まり市場は再び混乱する。場合によっては、当局による公的資金注入、ECBの流動性供給や国債購入をきっかけに事態が大きく変わるケースもある。

・仮にこのシナリオを前提にすると、銀行の預金流出という緊急事態に対して、当局が機動的に動くことができないリスクがある。先週末のG8サミットでは、「イタリアのモンティ首相が、欧州規模の銀行預金保証制度の創設を提案・討議された」とロイターが報じている。リーマンショック後に、預金取り付けが起きたイギリスでは、金融当局の迅速な対応が行われたが、それに比べると意志決定のプロセスが複雑な欧州当局の対応が適切に行われるだろうか?

・先述した5月14日レポートにおいて、「欧州債務問題のリスクは中立でみる」が望ましいという考えを紹介した。ギリシャの政治リスクは突き詰めると分からないなら、中立がベターと考えたからである。ただ、問題の本質が、金融システム不安や当局の対応への疑念にあり、それが先週の株価下落の背景にあるなら、中立とは言えないかもしれない。

・現時点で、2011年末のように銀行間取引金利は上昇しておらず、ECBの流動性供給の効果もあり、米欧の銀行の資金繰りが緊迫している状況ではない。ただ、足元で年初からの低下が止まる兆しがあるのは気になる(グラフ参照)。ギリシャの政治動向などに加えて、こうしたシグナルにも注意を払いたい。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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