「すべてうまくいったわけではないし、いろいろな人から助けてもらった。ただし、我々が何かやっていたことは事実。じーっとしていては、ラッキーも呼び込めない」。これがシスメックス・家次恒社長の経営に対する姿勢である。 

家次恒
家次恒・シスメックス社長

 シスメックスは臨床検査分野の総合メーカー。臨床検査には、体内から血液や尿、細胞などを取り出して調べる「検体検査」と、レントゲンや心電図などで、体を直接調べる「生体検査」がある。同社は検体検査の大手で、なかでも血液検査に強い。定期健診の報告書に書いてある、おなじみの赤血球、白血球の数などを測る機器と試薬を製造している。

 顧客は病院や検体検査の会社というBtoBモデルだけに、一般にはなじみが薄いものの、推定ながら、世界の検体検査市場ではシェア9位、ヘマトロジー(血球計数検査分野)、血液凝固検査分野ではシェア1位を占める。神戸市に本拠を置く、神戸のライジング・スターである。

 今からほぼ40年前の1968年に、社員10名弱で創業した同社が、全世界で4100人を超える従業員を抱え、2010年3月期で売上1170億円、営業利益150億円を見込めるまで成長したのはなぜか。そこには神戸大学の加護野忠男教授が指摘する「仕組みビジネス」がある(連載第3回参照)。

アフターサービスではなく
ビフォーサービス 

 神戸市の中心街・三宮駅から市営地下鉄で約30分、西神南駅で降りる。ここはもう神戸市の郊外といった風情だ。駅から車で約5分のところに、シスメックスのソリューションセンターがある。