6. 大人の創造と知性の遊び場をつくろう

 アイスランドの火力発電所トップストーディンは、莫大な解体費用がかかるため、20年以上もの間放置されていた。それが今や、数人の市民活動家の手によって、職と活動の場所を失ったデザイナーや元工場作業員の協業の場に生まれ変わっている。その中から強力な産業が生まれるのが理想だが、発電所の利用許可を市に迫ったアンドリ・マグナソンは「目に映る全てのものが壊されたり、動きを止めたりする中では、新たなものが生み出される、そんな場の存在自体に意義がある」と言う。

 被災地の住民は一時期、義援金がパチンコに消えることを懸念していた。仕事という活動の場を失った大人たちが今、創造的で知的な活動にいそしむ場所こそ、行政が主体的に提供する必要があるのではないだろうか。

7. 世界の知恵を借りよう

 アイスランドでは、人口の3分の2がフェイスブック・アカウントを持っている。ソーシャルメディアを利用することで、市民活動家は財政破綻に喘ぐアルゼンチンやインドネシアなどの市民から情報を入手し、IMFの介入にいち早く抗議運動を展開した。

 知人友人と繋がる、プライベートな目的としての意味合いが強いソーシャルメディアだが、震災では、自分の安否をより多くの人に一斉に知らせる効率的な手段として注目された。そのメディアとしての可能性は、緊急性が高い情報の共有のみならず、再生への歩みをリアルタイムに共有し、同じ志をもった者同士が結びつく場として今後も注目に値する。

8. 行政が主力産業を選ぶことはやめよう

 日本の地方は、高齢化と過疎による人口減少の傾向が止まらない。一村一品運動に代表されるように、こうした地域の多くでは、行政が「これ」という産品を選出し、彼らが会社となってその産品を積極的に外へと送り出すアプローチが取られている。しかし、もし行政が選定した特産品がコケたらどうなるのだろうか。特に一次産品の場合、天候不良や資源の枯渇など、多くのリスクを内在する。行政には、そうした産品の特定よりも、地域住民の着眼点から生み出される新しい価値をいっそう高めるべく後方支援する仕組みづくりこそが望まれる。

9. 多様な資源の利用方法を考えよう

「アイスランドの自然は世代を超えた国民の財産である」――アイスランド憲法の改定案に盛り込まれている一項目である。こうした考え方は当然のようで、実は多くの国ではそうではない。魚や地熱がいい例だ。

 アイスランドでは、地熱発電が総発電量の27%を担っている。しかし驚くべきは、地熱の活用法の幅広さだ。発電利用は実は6割にすぎず、その他に公共プールの温水、屋外駐車場の路面の氷結防止、家庭や公共施設の暖房や温水源、その他にも野菜や果物のハウス栽培や、魚の養殖や乾燥まで、さまざまな用途に使われている。そして、アイスランドでは地熱が多様な用途に利用されていればいるほどクオリティ・オブ・ライフ(QOL)が高いと認知されており、その地域での居住を希望する人が多い。

 資源をいかに活用するのか。日本でも、資源が特定産業とそれに従事する人だけのものでなく、地域および市民全体のためであると改めて認識されるべきだろう。きちんとした資源管理のもと、その多様な用途が模索できれば、地域全体の暮らしの豊かさにも結びつく。