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市場との対話の失敗〜困惑するマーケット〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・ギリシャリスクを巡る思惑で、世界の金融市場は不安定な状況が続いている。昨日(5月23日)の欧米市場では、「欧州当局者による、ギリシャのユーロ離脱時の対応策を用意する必要がある」という報道をきっかけに、米国株は一時大きく下落した。その後は買い戻されて2日連続で横ばいとなったが、市場の不安心理はなお強い(グラフ参照)。


・昨日から行われたEU首脳会合においても、ギリシャのユーロ離脱への対応について、欧州首脳の方針はこれまでと変らないことが示された。この会合で、ギリシャのユーロ離脱を防ぐ方向で政治が動くとの思惑も一部であったが、現時点では示されなかった。欧州諸国とギリシャの心理戦が続くうちは、ギリシャリスクを材料に一喜一憂する展開が続くかもしれない。

・市場がリスクに対して非常に神経質な中で、昨日(5月23日)の日銀の政策決定会合では、政策判断は据え置かれた。この発表と同じ時間帯に、為替市場では円高が進み、日経平均株価も下落した(グラフ参照)。これについて日経新聞は、「日銀と市場、すれ違い」と伝えている。市場が期待した金融緩和に、日銀が応えられなかったということである。


・そうした解釈が妥当かどうか、様々な議論がありうるだろう。ただ実際には、強まると期待された金融緩和姿勢が、逆に後退する疑念が浮上した可能性がある。これまでの経緯を整理すると、2月14日の金融緩和実施と物価目標設定で、金融緩和が強化され、これが3月初旬までの円安と株高を後押しした。「強力に金融緩和を推進」との日銀の姿勢が示され、脱デフレ時期が早まるという市場の期待が高まった。

・ところが、昨日の金融政策の声明文では、「強力に金融緩和を推進」という文言の代わりに「適切な政策運営に努めていく」という言葉が登場した。「強力に金融緩和を推進」という文言がなくなれば、2月以降の「金融緩和強化」の姿勢が後退したとの思惑につながる。米FOMCの声明文の変化に市場は反応するが、同様に注目されるようになった日銀の声明文に対して、市場は金融緩和姿勢の後退を感じたかもしれない。それが、円高と株安をもたらした可能性がある。

・昨日の記者会見で白川総裁は、「強力に緩和推進する姿勢は全く変わっていない」と述べ、この思惑を否定した。文言変更の理由は、「毎回この文章を書くのもどうかなということで、今回は『適切な』という言葉で表現した」(ブルームバーグ)とのことである。この説明が何を意味するかはさておき、デフレから抜け出せない中で、プラス物価目標実現のために金融緩和強化が必要なことは明らかだろう。日銀は、本音では金融緩和を強化したくないのではないか、と市場が戸惑ってもおかしくない。

・伝統的な金融政策が限界に達する中で、資産市場の価格形成を通じて、中央銀行は金融緩和の効果を強めることができる。特に、欧州問題を背景に市場のリスク許容度が低下している状況で、「中銀と市場の対話」がより重要な局面である。声明文という公式見解を通じて、市場との対話に失敗し金融緩和に対する期待を惑わすことは、(そうした意図に関わらず)金融緩和効果そのものを抑制するリスクがある。



(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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