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保田隆明 株ニュースの新解釈
【第3回】 2009年1月26日
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保田隆明 [小樽商科大学ビジネススクール准教授]

“守り型”M&Aがまた増える:市場シェアに注目

経営合理化には、依然M&Aが有効

 未曾有の不景気に見舞われつつある日本列島であるが、振り返ればほんの5年ほど前も、不景気の最中にあった。特に、90年代後半から日経平均が8000円割れを起こした2003年あたりまではまさにドン底であったが、この時期こそが日本企業によるM&Aが本格化した時期である。

 M&Aには「攻め型」と「守り型」の2種類あるが、当時は守り型M&Aが中心であった。あらゆる業界において収益を維持するには経営の合理化、コストカットをする必要があり、そのためにはM&Aが不可避ということであったのだ。

 同様のことが今年、そして来年も起こるはずだ。

 我々は、つい昨年までの投資ファンドの派手な立ち回りや敵対的買収ブーム、それに日本企業が海外企業を積極的に買収する姿などを見るにつけ、好景気下でのM&Aに慣れてしまっていた。

 そのため、M&Aと聞けば攻めの経営戦略であると思い込みがちであるが、もともと日本企業にとってM&Aとは自社の経営基盤を維持するために仕方なく実践する守り型のものであったのである。

特に国内市場依存型産業に注目

 年末に登場した大手損保3社(あいおい損保、三井住友海上HD、ニッセイ同和損保)の経営統合の話は、典型的な「守り型」のM&Aである。人口減少、そして、自動車離れが進む損保業界にとって、今後も健全な収益基盤を維持していくには、新規ビジネスか海外市場に活路を求めるしかない。

 ただ、保険会社にとっての新規ビジネスとは、未知のリスクを保証するような業務となる。AIGが金融保証に入れこみすぎて実質的に経営破たんに追い込まれたのは記憶に新しく、新規ビジネスへの参入は高いリスクを伴う。海外への進出に関しては、東京海上が昨年に海外でのM&Aに打って出たことは大きな話題となった。

 ただ、海外進出も容易ではない。特に、今のように金融不安が巻き起こってしまうと、M&Aで海外の保険会社を抱え込むことはリスクが大きい。

 そこで、まずは勝手知ったる国内市場においての合理化、つまり、M&Aを進めようということになる。それが今回の損保大手3社の経営統合プランの背景である。

損保と百貨店で大型M&Aが起きた理由

 この損保業界での例は、今年、来年日本において他の多くの業界でも起こることのサンプルケースである。

 実は、損保業界より早くこの動きが出ていたのが百貨店業界である。人口減、景気低迷により国内の消費市場は縮小するのみであり、百貨店企業にとっては損保業界と同様に海外または新ビジネスへ進出をするしかない。

 ただ、日本の百貨店は一度海外進出で失敗を経験した企業が多く、海外展開の難しさを自らがよく知りつくしている。

 新規ビジネスに関しては、大丸がピーコックというスーパーマーケット業を手掛けたり、西武百貨店、そごうのミレニアムリテイリングは、セブン&アイ傘下でスーパーやコンビニとのシナジー創出を目指しているが、どれも目立った効果は上がっていない。

 したがって、まずは既存の国内百貨店事業の合理化を進めることが先決となる。結果として、今や百貨店グループは3つ~4つのグループに集約されつつある。

 このように見て行くと、業界として事業エリアが国内市場に偏りがち、かつある程度の成熟産業である業種において、合理化追求のためのM&Aが今後も行われるであろうことが想像できる。

 M&Aが必ずしも業界に効率性をもたらすという保証はないが、少なくともその可能性はM&Aが起こらなさそうな業界よりも高いと言えるだろう。

 したがって、ストラテジスト的な発想をするのであれば、M&Aが起こりそうな業種に投資をすることが一つの投資戦略となり得る。

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保田隆明 [小樽商科大学ビジネススクール准教授]

1974年生まれ。早大商卒、早大院ファイナンス研究科修了。小樽商科大学ビジネススクール准教授。リーマン・ブラザーズ証券会社、UBS証券、SNS事業での起業、ベンチャーキャピタル、金融庁研究員等を経て2010年4月から現職。MBAでコーポレート・ファイナンスなど、学部では財務管理論を担当。
著書は「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」「投資銀行青春白書」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。
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