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だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

選手の出場辞退で騒動勃発!
本質的な「矛盾」を抱えたままのWBC

谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]
【第10回】 2008年12月1日
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 開催まであと3ヵ月を切ったにもかかわらず、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のドタバタ劇が続いている。監督の人選が二転三転し、10月末にようやく原監督に決定。コーチ陣も決まり、これから本格的なチームづくりに入ることができると思った矢先、今度は選手選考で再び騒動が起きている――。

 まずはこれまでの経緯を振り返りながら、このWBC騒動の根本的な問題点を考えてみよう。

迷走を続けた監督選考

 そもそも、WBCの代表チーム編成を目指して加藤良三・プロ野球コミッショナーが作った「WBC体制検討会議」は、なぜそのような構成メンバーになるのか非常に理解しにくいものだった。

 メンバーは加藤氏のほか、王・特別顧問、星野仙一氏、野村克也・楽天監督、高田繁・ヤクルト監督、野村謙二郎・野球解説者の6人。王氏が中心になって議事を進めたのであろうが、10月15日の第1回検討会議から雲行きが怪しくなった。

 というのも、「現役監督には負担が大きすぎる」との意見が多くでて、星野氏が有力候補に上げられたからだ。会議後、野村氏は、報道陣に対して「出来レースじゃないか」と会議内容を批判した。「出来レース」の意味は、いうまでもなく星野氏を代表監督に就かせる、という渡辺恒雄・読売新聞本社グループ会長の思惑どおりに事を運ぶということだ。

 その野村発言が波紋を呼ぶなかで、さらに大リーガー・イチロー選手が検討会議を痛撃する発言をした。

 「現役監督を外すというのは、本気で最強のチームを作ろうとしているとは思えない」

 「WBCは、オリンピックのリベンジをするような大会ではない」

 イチロー発言の衝撃力は大きく、まず、10月22日、星野氏が公式サイトで代表監督固辞を表明し、「出来レース」が崩れた。そして、10月27日に開かれた第2回検討会議では、現役監督も代表監督候補に入れることにして人選が行われた。

 その結果、原辰徳・巨人監督が代表監督に選ばれた。その経緯について王氏は記者会見でこう話した。

 「ユニフォームを脱いでいる人の中で候補が出てこなかった。じゃあ『現役監督で』となり、『原監督がいいんじゃないか』という話が出てから時間はかからなかった」

 報道によると、原氏の名を出したのは加藤氏だったようだ。加藤氏は、代表監督の人選を一任された際、人選の基準について「一番大事なことはWBCで勝てるチームづくり」と発言した。その基準から加藤氏は、原氏を適任と考え、推したのであろうか。

 すくなくとも、「勝てるチームづくり」ということから見て、原氏以上の経験、実績を持つ野村氏の名が挙げられてもよかったはずだが、加藤氏は野村氏の名を出さなかった。原氏であっさり決まったという裏には、渡辺氏の意向を汲んで、現役であれば原氏に決めるという筋書きが加藤氏にあったのではないか、と勘ぐりたくもなった。

 ともかく、ばか騒ぎの様相を呈したWBC代表監督問題もなんとかけりがついた、と思うまもなく、次なる騒ぎが持ち上がった。

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谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]

1938年鳥取市生まれ。講談社、文芸春秋の週刊誌記者を経て、フリーランスのスポーツジャーナリスト。スポーツを社会的視点からとらえた批評をてがける。市民の立場からメディアを研究する「メディア総合研究所」会員。フェリス女学院大学非常勤講師。著書「スポーツを殺すもの」(花伝社)、「巨人帝国崩壊」(花伝社)、「日の丸とオリンピック」(文芸春秋)など。


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底の浅いスポーツ報道に高騰する放映権料、エージェントの暗躍やスポンサーと協会の利害関係、そしてスポーツを利用する政治家まで。スポーツは純粋な「競技」から、完全に「ビジネス」と化した。スポーツを殺したのは一体誰なのか。暴走するスポーツバブルの裏側を検証する。

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