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5月25日 18時0分
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相場の地合いが変わってきた気がする - 広木隆「ストラテジーレポート」

相場の地合いが変わってきた気がする。昨日の米国株式市場ではダウ平均は3日ぶりに反発し、前日比33ドル高で終えた。日中は売りに押される軟調な場面が多かった。中国、欧州と景況感を示す指標が悪化、米国でも4月の耐久財受注でコア資本財が2カ月連続で悪化した。コア資本財は航空機を除く非国防資本財で設備投資の先行指標とされる。米国景気の先行きにも懸念が台頭、景気敏感株の上値が重くなった。それでも取引終了にかけて急速に値を戻した。きっかけはイタリアのモンティ首相の発言とされる。

報道によるとモンティ首相は、ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)非公式首脳会議では各国指導者の過半数がユーロ共同債に賛成していると語った。モンティ首相は、ドイツにとってはどの国もユーロ圏を離脱しないよう確実にすることが利益であり、ギリシャでは「何でも起こり得る」が、引き続きユーロ圏に留まるだろうとの認識を示したとも報じられた。

しかし、これは別にサプライジングなニュースでもなんでもない。「ユーロ共同債に賛成する指導者が過半数」というのは当たり前だろう。EUの多くの国はクレジットの悪さがネックであり、ドイツの高い信用力をバックに低い金利で資金が調達できればハッピーに決まっている。ユーロ共同債に賛成するのは当然である。ギリシャがユーロ圏に留まるだろう、との見通しは多くの要人が発言している。別にモンティ首相の発言が特に信頼性が高いというわけではない。

つまり、モンティ首相の発言を好感して上げたというより、特段新味に欠ける話でも相場上昇のきっかけにできるくらい地合いが改善してきたことの表れだろう。今週に入って4日間、ダウ平均の日中足を見ると、すべて引けにかけて上昇している。月曜日は寄り付きがほぼ安値、引けがほぼ高値。火曜日は日中堅調だったが引けにかけて失速するも最後は下げ幅を縮めた。水曜日は一時200ドル近く下げていたのを引けにかけて前日比ほぼ横ばいまで戻した。そして昨日は上述の通りである。ダウ平均の終値は月曜から、12,504ドル、12,502ドル、12,496ドル、そして昨日が12,529ドル。チャートを見て分かるとおり、12,500ドルという節目が意識されている。





状況は何も変わっていない。業績面、金利面から見たら、すなわちバリュエーションが割安であるのは以前からのことだ。世界景気の見通しを改善させるような明るい指標が出てきたわけでもない。最大の相場の悪材料である欧州問題も、ギリシャのユーロ離脱懸念、南欧への波及懸念など不透明感が晴れたわけではない。

ただ明らかに変わったのは、フェイスブックの上場というイベントを通過したことだ。時価総額で1,000億ドルという、日本で言えばトヨタ自動車に次ぐ規模の企業が株式市場にポンと上場してくるのだ。いくら市場の厚みが違う米国市場とは言え、需給バランスが崩れて当たり前だ。アップルの株価は4月の上旬に636ドルの最高値をつけて下落に転じたが、フェイスブック上場日の前日、17日が直近の安値。そこから昨日まで7%弱上昇している。フェイスブックの上場による需給バランスの乱れが米国市場の重石となっていた面もあったのだろう。その大きなイベントが通過したというのは、ひとつの変化だろう。

昨日、日経平均は取引時間中では1月18日以来、約4カ月ぶりとなる節目の8,500円を割り込む場面があったものの、その後急速に切り返している。こちらも8,500円という節目を割ったことで、下げ方向の目標達成感が一旦出たのだろう。昨日、個別で目立ったのがシャープの上昇。売買代金3位の商いを集めて26円(7%)高と急伸し東証1部の値上がり率ランキングでも8位に入った。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループと中国で共同事業を始めるとの報道が買い材料となった。鴻海が四川省に建設する液晶パネル工場に、シャープが先端技術を供与すると伝わった。しかし、これもモンティ首相の発言と同じく、そんな驚くべきニュースだろうか。シャープと鴻海の提携はすでに発表されていたことである。これも米国株同様に、たいしたニュースでもないことを材料にできるくらい地合いが改善してきたと言えるだろう。

もちろん、磐石ではない。その象徴が本日のソニー。理由も無く5%近く下げている(13時半現在)。売買代金も好材料が出て大幅高となっているJTに次いで2位の商いだ。相当まとまった売りが出ているようだ。ソニーの株価は大台割れ目前1,000円トビ台になっている。PBR 0.5倍、株価も1,000円大台割れ目前の株をここから空売りしたとして、あとどれだけ取れるだろう。仕掛け的に売るなら先物を仕掛けたほうが良いように思える。これは何らかの理由で大量の現物を手放さなければならない投資家からの売りだろう。

但し、株価がついているということは - 当たり前だが - 買い手がいるということだ。もちろん、売り方の買戻しもあるが、「手放さなければならない投資家から、リスクをとれる投資家へ玉が移動した」というように捉えたい。

そろそろいいところではないか。昨日のレポートで述べたように、小さく、何回もベット(賭け)を行ううちに「底値圏」を捉えることができる。そのうちの1回目はここで行ってみるのも悪くないタイミングではないか。日経平均のPERは11倍台割れ寸前だ。ここまでバリュエーションが低いのはリーマンショック以来。そして、そのときと今とでは企業業績の状況がまるで違うことも繰り返し述べてきた。東証1部全体のPBRは0.9を下回る。業績が大幅に改善する見通しがもたれている現状では明らかに異常値と言えるだろう。異常なことは長く続かない。早晩、修正されると考える。

米国株式市場が落ち着きを取り戻せば、日本企業の収益改善に対する再評価から、株価の水準訂正が起こるだろう。無論、欧州不安が小康状態を保つということが前提であるが。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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