経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第6回】 2012年6月5日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【石田茂氏×武田隆氏対談】(後編)
「マス広告×ソーシャルメディア」のデザイン、
それぞれの特性を活かした手法が互いを補完し合う

企業側から発信されるストーリーにのせられた“計算された言葉”と、ソーシャルメディアによってユーザー自身から発せられる“素朴な言葉”。マス広告とソーシャルメディアのそれぞれが得意とする手法を掛け算することで、新しいコミュニケーションデザインの潮流となる。
どちらか一方だけでは、消費者の心をつかむ事が難しくなった今、両者をいかに融合させるか、そのバランスを見極めなければならない。コミュニケーションやマーケティングの手法も時代とともに変化してきているのだ。
前回の対談にひきつづき、株式会社電通の石田茂氏にお話をうかがいながら、今後コミュニケーションデザイナーに求められる役割について考えていこう。

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短期と長期。両方の視点を組み合わせた顧客へのアプローチが
求められる

石田茂(いしだ・しげる)
株式会社電通 iPR局iCR部クリエイティブ・ディレクター コミュニケーション・デザイン・センター兼務。1990年、株式会社電通に入社と同時にPR局(現・コーポレート・コミュニケーション局)に配属。マーケティングPR、企業PR、リスクマネジメント領域の仕事に従事。その後、マーケティング・プロモーション統括局(現・APソリューション局)にて、ブランディングおよびマーケティング領域での先端メソッドの開発リーダーとして開発プロジェクトを推進。その傍ら、クライアントのブランド戦略コンサルティング業務にも従事。2007年から営業局にて営業部長を担当。2012年4月より現職。著書に『ブランド戦略シナリオ』(ダイヤモンド社、共著)。2003年、筑波大学非常勤講師。2006年、国際城西大学大学院にてブランドマネジメント講座を担当。

石田:企業のマーケティング施策で、キャンペーンってやりますよね? この「キャンペーン」という言葉は「キャンプ」から来ているんですが、「平地を押さえる」という意味があるんです。

武田:軍事用語なんですね。

石田:そう。キャンペーンで大事なことのひとつは、「期間を区切って」実行することです。

武田:集中砲火を浴びせるわけですね。

 消費者の態度変容はもちろん、売り場の方々にもちゃんとイベントが起きていることを知ってもらって、棚割りを広げてもらう。相乗効果でモノが売れる仕組みですよね。

石田:そう。でも、短期的な施策だけでは成果は出しづらくなっています。これもソーシャルメディアの時代になって変わってきたことのひとつです。

 短期間に集中してキャンペーンを打つ、という今までのやり方に、長期間にわたりじっくり顧客との関係を育てる施策を組み合わせる必要がある。つまり「ロングターム・リレーションシップ」のことですね。

武田:顧客との関係構築に成功したことによる効果はたくさんのケースで見られます。

 たとえば、カゴメさんのコミュニティは、トマトの苗をコミュニティの参加者に配って、みんなで育てるんです。春に苗を植えて、参加者たちが励まし合ったり情報交換をしたりしながら、夏を乗り切って、秋に収穫を迎える。収穫されたトマトはさまざまなレシピで料理されるんですが、それらのレシピも参加者から投稿されたものなんです。冬は川柳大会などを開いて、また次の年の苗が届く季節を待つ。

石田:1年を通してイベントが続くんですね。

武田:そうなんです。コミュニティで毎年繰り返されるイベントが強力にファンの心をつかんでいます。あるコミュニティの調査では、コミュニティ参加者は、一般消費者に比べて9.1倍もその企業のコンテンツを記憶しているという結果が出ました。同じくその企業を身近に感じるようになったと答えた方は84%にもなるんです。

石田:すごいですね。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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