佳食漫遊!ニッポンの郷土料理
【第23回】 2012年5月30日 橋本裕之

モサ海老、ハタハタ、砂丘らっきょう――鳥取の春の味覚は海と砂丘の味わい

 鳥取県といえば、筆者がまだ訪れていない数少ない県のひとつでもあるので、どんな郷土料理があるのか、興味津々である。日本一の面積を誇る鳥取砂丘、そして、日本一県民が少ない県としても有名だ。そんな鳥取の料理を食べさせてくれる、鳥取の老舗の蔵元が直営している居酒屋があるという。

 江戸時代の延宝元年(1673年)から続く、米子市の老舗の酒蔵・稲田本店が14年前に日本橋にオープンさせた店が『稲田屋』だ。

 今や都内と米子市に9店舗を構えるまでとなった。蔵元の自慢の酒もそうだが、鳥取を中心とした山陰の味覚を堪能させてくれる。今回は品川駅からすぐ近くの『四季と酒の蔵 稲田屋 品川店』に訪れた。

 蔵元の直営ということなので、ビールではなく、最初から日本酒を頂くことにした。まずはスッキリと飲もうと思い『稲田姫』の純米吟醸を頼んだ。そして、メニューを見てまっさきに頼んだのが、『珍味三種盛り』だ。

 さすが、日本酒の蔵元がやっている店というだけあって、左党大満足のつまみが盛り沢山ある中、一際、目を引いたのがこれだ。

ホタルイカに板わかめ、砂丘らっきょで
最初から日本酒飲みモード全開に!

写真・手前が「丸干し蛍烏賊」、写真・右が「御来屋の板わかめ」、写真・左奥が「しじみとにんにくの醤油漬け」。左党の心をぐっと掴む珍味3点盛り。

 大きなかごに、3種類の珍味がどーんと盛られてきた。これは酒飲みにはたまらない。見るからに日本酒が進みそうだ。

「うわー! これは酒飲みにはたまらないセットだなぁ!!」

 まず一品目は「丸干し蛍烏賊」。その名の通りホタルイカをシンプルに干しただけのつまみである。干されたイカの旨みに、ワタのほろ苦さがたまらない。そして、つまみを取る手が止まらなくなる。

 ホタルイカは網代漁港で獲れたものらしい。網代漁港は鳥取県の北側に位置する漁港で、他には、やはり山陰地方の名物である、松葉ガニの水揚げなどでも有名である。

 続いてのニ品目の珍味は「御来屋の板わかめ」だ。鳥取県西部に位置する、大山町の日本海側御来屋(みくりや)産のわかめで、文字通り板状に天日干しされて、パリパリになったものである。御来屋海岸は、大山から、栄養たっぷりの水が流れ込み、天然のわかめが育つのに絶好の場所とされている。ほかにも同じような理由でサザエ漁でも有名だ。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

橋本裕之

飲食店から蔵元訪問など、豊富な食べ飲み歩きの経験から、出版やWEBなどで、食と酒をテーマにした編集やライティングに関わる。過去の執筆に『dancyu』(プレジデント社)、『本格焼酎ぐびなび』(誠Style)など。SSI認定焼酎アドバイザー。ティーコンシェルジュ2級。


佳食漫遊!ニッポンの郷土料理

土地々々の風土に磨かれ、伝え継がれてきた日本の郷土料理を、料理の歴史や地域の慣習などを交えて紹介。その素晴らしさ、味わい深さを再確認していただければ幸いです。

「佳食漫遊!ニッポンの郷土料理」

⇒バックナンバー一覧