専門性を生かせる企業に就職できず、失望する理系学生が少なくない現状を変えようと、東大工学部の現役学生が作り出した支援サービスが好評だ。企業側からも「欲しい人材にアプローチできた」と喜びの声が上がっている。

ノーベル賞受賞ニュースの陰で
危機に瀕している日本の基礎科学

LabBaseを立ち上げた加茂倫明さん(24歳)LabBaseを立ち上げた加茂倫明さん(24歳)。東京大学工学部は現在休学中で、理系の大学生・院生の支援サービス事業に取り組んでいる

 ここ数年は毎年のように、日本人のノーベル賞受賞のニュースを耳にする。昨年、医学生理学賞を受賞した本庶佑氏をはじめ、大隅良典氏、山中伸弥氏など、世界の舞台で活躍する研究者が数多い。

 だが、輝かしいニュースの陰で、日本の基礎科学は危機に瀕しているのをご存じだろうか。ノーベル賞受賞者がそろって、基礎研究への支援を訴えたニュースも記憶に新しい。

 科学分野で重要なのが論文の発表数だが、この5年間、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど先進国の中で、唯一日本だけ論文数が減少している。

 若手の研究者を取り巻く状況も悪化している。修士課程を修了後、博士課程へ進学する学生は、この15年間で半減しているのだ。かつては「科学技術立国」といわれた日本だが、いまや凋落傾向にあるといって過言ではない。

 そんな状況下、科学を復興させようと始まった事業がある。LabBase(ラボベース)は、理系の大学生・院生を対象にした支援サービス。さまざまな機能があるが、メインは、理系学生の「就職活動支援」である。現在、9000人の学生が登録しており、登録利用料は無料である。

 この事業を始めたのは、東京大学工学部に在籍する加茂倫明さん(24歳)。灘高校から東大理II類に進学し、工学部に進級した加茂さんだが、現在は休学してLabBaseに取り組んでいる。