超成長株投資で資産10倍計画!

サンバイオ(4592)の株価は暴落から復活するのか?
指標的には割高だったサンバイオ株が高騰した理由と
投資の失敗を避ける5つのチェック項目山本潤の超成長株投資の真髄 第11回

2019年2月6日公開(2022年3月29日更新)
山本 潤
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外資系投資顧問でファンドマネジャー歴20年の山本潤氏による、10年で10倍を目指す成長株探しの第7弾。今回は、サンバイオ(4592)を取り上げます。


投資判断不可能 5段階中5が最高評価
(投資判断はわたしの能力では不可能)

サンバイオの株価が大暴落

山本潤のメールマガジン&オンラインサロン。10年で10倍を目指す超成長株投資の真髄

 サンバイオ株は1月21日に高値1万2730円をつけた後、1月29日引け後にIRをリリースした後、4日連続ストップ安など株価は暴落し、2月5日に高値から約5分の1の2440円でようやく寄り付きました。

 きっかけは同社のIR[慢性脳梗塞患者への再生細胞医薬品「SB623」慢性期脳梗塞を対象にした米国でのフェーズ 2b 臨床試験の解析結果の速報]でした。臨床試験について主要評価項目を達成できなかったのです。

サンバイオのIRについての疑問

 彼らのIR発表は以下のように続きます。
「慢性期脳梗塞に伴う運動機能障害を呈する患者 163 例を対象に、本剤の有効性および安全性を検討しました。
163 例の患者は、本剤 250 万細胞投与群、本剤 500 万細胞投与群、Sham 手術群(コントロール群)の 3 群に割り当てられました。
本試験の結果、投与 6 カ月後に Fugl-Meyer Motor Scale(FMMS)がベースラインから 10 ポイント以上改善した患者の割合(主要評価項目)について、
本剤投与群は、コントロール群と比較して、統計学的な有意差を示さず、主要評価項目を達成できませんでした」
(同社HPより)

 ここで述べているFMMSというテストは100近くの項目についてわずか3択の中から0か1か2を選ぶものです。0はまったく不十分。1は不十分にしか動かない。2は十分に動く。脳梗塞の後のリハビリの状態から選びます。たとえば腕が上がる具合とかです。

 これではデジタルすぎて、微妙なニュアンスの改善度合いは測れません。多くの患者さんは0と1の間か1と2の間の状態にあるからです。不十分にしか動かないが、十分には回復していないが、不十分さは軽減している人がいても選択肢は1を選ぶしかないのです。

 わたしはバイオの専門家ではないので、新薬プロセスの正当性について述べる資格はないのですが、
「このテストでは薬の真の効果は測れないのではないか?」というのがリリースを読んだわたしの感想です。また、母集団の分け方や、人種の影響、食生活などの外部環境の影響も相応にあるでしょうから、本リリースを持ってSB623が慢性脳梗塞に効き目がなかったということにはならないと思うのです。実際には効き目はありそうなのだが、統計的な有意を示すことができなかったというだけというのが真実に近いでしょう。

 有意を示すといっても段階がいくつかあり、5%の有意は示せなかったが、一段下の有意は示すことができたかもしれません。薬が効く患者のプロパティを将来絞り込むことができれば、有意を将来は示すこともできるでしょう。母集団を選択できるような方向性で開発は継続するものと思われます。たとえば、サイバーダインの補助具を使って、リバビリをすれば、もう少し効果は出たはずです。多面的、複合的なケアと一緒にトータルで脳梗塞を治すという態度が求められます。

 こうした「夢」企業のバリュエーション算定は難しく、潜在市場に新薬の成功確率をかけて算出する以外に手法はなさそうです。確率を計算できるほどの能力がないため投資判断は(わたしでは)算出不能としました。ただし、脳が外傷を負った場合には差異が認められた以上、脳梗塞に効果がないはずはないと考えるのが常識的な判断だろうと思います。結果として、証券会社によってはいきなり目標株価が数分の1の1500円というところもあるようですが、それはないでしょう。極端すぎます。

 個人的には4000円程度の価値はあると考えております(根拠は前述の常識的な判断)。

割高な株がなぜさらに割高になるのか?

 同社の株価は脳梗塞患者が660万人と潜在的に多い米国市場で上市を織り込んでいました。
慢性期脳梗塞はいまだに有効な治療薬がありません。それを治療できる夢の再生細胞薬がSB623であったのです。従業員数がわずか32人、前期2018年1月の売上がわずか4.9億円の同社の時価総額が数千億円で評価されていたのです。

 多くのバイオ株は株価指標面では極めて高いのが実情です。投資家の中には、どうして割高な状態が長期にわたって維持されるのだろうか不思議に思う人もいると思います。サンバイオ株についても、業績では説明できない「夢」の部分でこの数年間、どんどん株価が上がって行きました。今回、大暴落に至ったのは残念ですが、3000円でも極めて高いPSRやPBRでした。それが1万2000円を超えたのですから、投資家の中にはこの株価水準が理解ができない人もいるかと思います。

 それについては、わたしなりに思うことがあります。わたしは株価が割高な状態が長期に続くことは、むしろ、普通であると考えています。

 理由は簡単です。株式の需給です。需給が割高株の方が割安株に比べると圧倒的によいからです。

 つまりこういうことです。投資技術や投資インフラが発展したお陰でもあるのですが、ロングショート戦略という割安株を買う一方で、割高株をカラ売る低リスクの戦略がグローバル規模で普及したからです。

 わたし自身も14年間ロングショート戦略のファンドマネジャーであったので割高株の急騰の仕組みがよくわかるのです。わたしは、割引配当モデルを使って長期業績の見通しがよい株を少し高PERであってもロングで保有していました。

 すると、第一段階の仕掛けが起こります。割高株の空売りをどうしてもしたい他のファンドマネジャーがわたしに株を借りたいと申し込みをしてくるのです。わたしは喜んで貸します。

 なぜならば、銘柄によっては数パーセントの貸株料を受け取ることができるからです。PERの高い銘柄は業績の見通しがよいので下方修正がほとんどありません。それに配当利回りに加えて貸株料が入ってくるのでよいことしかないのです。

 一方で、PERが高いという理由で空売りをするファンドマネジャーは一般的に成績が悪いのです。なぜならば、よい業績に加えて高い貸株料と配当や金利の負担や厳しいロスカットルールや高額の運用報酬でファンドがやられて解約に至るからです。投資は目先の低PERで判断すると失敗することを素人ファンドマネジャーは知らないのです(買いは、長期のキャッシュフローを割り引いて理論株価を考えなければ失敗します)。

 第二段階です。需給が改善します。
 成績が悪いファンマネは数ヶ月かそこらでポジションを諦めますので最後は泣く泣く買い上がってくれるのです。多くは解約にともなうポジションの解消です。2月と3月に向けてヘボなヘッジファンドの解約が待ち構えているのでご注意ください。そのときは割安株ほど売られます。当然、割高株ほど買われます。

 第三段階です。さらに需給が改善します。
 空売り情報は時価総額のわずか0.1%を超えるだけで当局への報告対象になるのです。それを見た目ざとい証券会社や需給屋さんや仕手筋が、ロスカット狙いの買い上げを行うのです。

 第四段階です。さらに需給が改善します。
 いま流行りのアルゴリズム取引が、トレンドの発生につけこむからです。割高なものが、さらに割高になるというヘンテコリンな現象が起こるのです。彼らは人間ではないので、どんなに割高でもすっ高値でも、成り行きの買い注文を躊躇しません。彼らはトレンドを自分で作りにいくからです。ばかばかしいことです。

 短期的には、マネーの循環が生じて、上記のように、株価は無意味でヘンテコリンな暴れ方をして上がっていくのです。サンバイオの株価も、正当な評価ではなく、上記の需給改善の循環プロセスを踏んでいたとわたしは思っています。

 それならば、あえて割高なものを買えばよいのでしょうか。そうもいえないのです。なぜならば、オーバーシュートの後には、必ず、今回のような目も当てられない大暴落がくるからです。わたしはファンダメンタルズで説明ができない株には投資をしません。

投資における失敗を避ける5つの質問

 一部の投資家は今回の損失で大打撃を受けることになりましたが、このような急落を事前に避けることはできるのでしょうか。もちろん、ある程度はできるのです。

バイオ関連株について、以下の5つの質問に「はい」か「いいえ」で答えてください。

質問1
あなたは医薬品開発の専門家ですか?

質問2
ひとつの製品に依存している一本足打法の会社ではないです。
バランスの良い商品構成を持ち、少なくとも多数のパイプラインがフェイズ3に存在していますか?

質問3
株式評論家や証券会社がまだ誰も取り上げていない、ほどんど誰も知らない企業ですか?

質問4
多くの株式指標で低い評価となっていますか?
たとえばPERなどが十分に低い評価で安値で放置されていますか?

質問5
この会社の株価のことを1年以上、周りの人々が誰も話題にしていませんか?

-5つの質問への診断結果-
「いいえ」が3つ以上あるときそのバイオ株は割高です。
4つならば、この会社は極めて割高です。
「いいえ」が5つのとき、この会社は投資対象外となります。
しかも、極めて危険な状態です。

 わたしはちなみにすべての項目で「いいえ」でした。サンバイオ株の投資を検討することさえありませんでした。わたしと同様に仲間の成長株投資の多くも同社への投資はしませんでした。それがよいことかわるいことかはわたしには断言できません。高い目標に向かって課題を解決しようとする姿勢は崇高で美しくそのために必要な資本を提供するのがわたしたちの役目なのですから。

サンバイオ(4592) /日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)

 

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