会社更生法の適用を受けての業績V字回復は、そのぶん他の誰かにシワ寄せがいったことを意味する。JAL再生は、国の大型企業再生のあり方に課題を残したといえそうだ。(日本航空〈上〉はこちら

 帝国データバンクによると、会社更生法を適用した上場企業は138社、うち再上場を果たした企業はわずか9社しかない(1962年~2010年11月末)。法的整理をして債務免除などを受ければ、簡単に業績が回復するわけではないことを物語っている。JALの目覚ましい業績回復には、熾烈なリストラや社内での意識改革が奏功したことは評価すべきであろう。

 今秋には再上場を控えているが、国(企業再生支援機構)がJALに出資した3500億円に対して、現在の収益力から逆算すると、「再上場時の時価総額はミニマムでも5000億円」(証券アナリスト)といわれており、投入した税金の回収という面でも成功を収めるとみていい。

 しかし一方で、国が関与した大型企業再生は、JALという会社に光をあてると同時に、その周辺にいくつもの影をつくり出した。

 5215億円の債権放棄を迫られた銀行団、リストラされJALを去った1万6000人の従業員、競争環境を歪められたライバル会社などがそうだ。

 JALは11年度決算で、営業利益2049億円、売上高営業利益率17%という高収益体質に生まれ変わったが、更生法の適用を受けた恩恵はこの先も続きそうである。その一つに挙げられるのが繰越欠損金である。

繰越欠損金は1兆円!?
長く続く法人税免除

 繰越欠損金とは、企業が赤字を出した場合、翌期以降の黒字(課税所得)と相殺して法人税を免除されるもので、現在は9年間適用できる。例えば、メガバンクは90年代後半からの不良債権処理で巨額の赤字を出したため、05年以降は順当な黒字を出してきたにもかかわらず、10年以上にわたって法人税の支払いを免除されてきた。