株式レポート
5月31日 18時0分
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最低水準を更新した米長期金利〜何を意味するか?〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・昨日(5月30日)の米国市場で、株式市場は大幅反落となった。欧州問題への懸念が再び高まったことから、リスク資産売りが強まった。リスクオフの動きに大きく反応したのが米債券市場で、10年金利は1.62%まで大きく低下した(グラフ参照)。


・先週から、欧州不安でユーロ安が進む中で、株式市場が落ち着きを取り戻す兆しがあったが、時期尚早だったということかもしれない(5月30日レポート)。欧州不安が収まらない理由は、ギリシャの再選挙のリスクに加えて、当局の政策対応への市場の不信感が強まっていることがある。5月22日レポートで、6月半ばのギリシャ再選挙前に、政策対応を巡る疑念で市場が揺れ動くリスクシナリオを紹介したが、それが実現しているということか。

・昨日の米国債金利の大幅低下の直接的な要因は、スペイン・イタリア国債金利の上昇と思われる。先日、債券・クレジット市場でプレーする機関投資家と議論する機会があったが、市場では、スペイン10年金利が6.5%近辺まで上昇すると、ECB(欧州中央銀行)などによる金利上昇抑制策が行われるとの思惑があったようだ。2011年にイタリア・スペインなどの金利上昇に対して、ECBによる国債買入、流動性供給などの対応が実現した経緯があったからである(グラフ参照)。


・ただ、これまでスペイン政府などからの要請もあったが、そうした対応は実現しなかった。イタリア国債入札が行われる中で、昨日スペインの長期金利が6.5%を超えて上昇した。更に、スペイン大手銀行の資本不足懸念も加わり、ECBなどの政策発動は行われないとの疑念から、安全資産への資金シフトが加速したとみられる。

・米国10年金利の1.6%台の水準は、同様に債務問題で揺れ動いていた2011年9月22日を再び下回り、1955年以降では最低水準である。先に述べたが、欧州当局の政策を巡る思惑で金利水準が大きく動いた面はあるが、2011年末よりも低い金利水準が定着しつつある、というのが債券市場の見立てということになる。

・米債券市場の値動きを正当化できるなら、欧州問題の混乱が長期化し、世界的な景気減速あるいは後退につながるシナリオを織り込んでいるということだろう。2011年に欧州問題で市場が混乱する中で、米国経済の復調で世界経済が持ち直したことが、株安・金利低下に歯止めをかけた。しかし、牽引役の米国経済の回復が止まれば、欧州発で世界経済全体も減速しかねない。現在の米株式市場の水準は、このシナリオまではあまり想定していないと思われる。

・これまで発表された、4,5月の米経済の指標は強弱入り混じっており、更にテクニカルな要因が影響しており判断が難しい。今月初旬の4月雇用統計発表をうけて、市場でリスクオフの動きが強まるリスクを5月7日レポートで指摘した。一方で、米経済全体が2011年のように減速に向かっているとまで、景気判断を下方修正するには依然材料不足である。今週末発表される、5月分のISM製造業景況指数、雇用統計などで、微妙な米経済の姿はある程度判明するだろう。仮にこれらが悪化すれば、米株式市場の景況感が債券市場に近づく過程で、米株式市場は一段と調整するリスクがある。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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