赤羽(東京都北区)の不動産は“買い”なのか?
6路線の鉄道利用と下町の雰囲気で人気急上昇中

2019年3月5日公開(2020年7月7日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

東京都北区の赤羽が、「本当に住みやすい街」の大賞に輝くなど、注目を集めている。6路線の鉄道が利用でき、大型スーパーもあり暮らしやすい。昼間から飲み屋が営業する一角には外国人観光客なども集まり、新たなスポットとして脚光を浴びている。少子高齢化が進む日本において、赤羽の不動産の資産価値はどうなっていくのか。今回はその実態に迫ってみよう。(フリージャーナリスト・福崎 剛)

池袋までJR埼京線で10分のアクセス

 「赤羽」駅は東京の北口に位置し、埼玉方面から来る路線の接続主要駅であり、JRの6路線が使える “鉄道利用の好立地”として知られる。こうした利便性のよさ、さらには、駅周辺の再開発計画で大きく変革を迎えると予想され、暮らしやすい街としての評価が高くなったのだろう。アルヒの「本当に住みやすい街2019」で第1位の大賞に選ばれた。その際の評価ポイントは次の4つだ。

■赤羽の住みやすさとは
* 大型スーパーに加えて、赤羽一番街商店街・赤羽スズラン通り商店街の2つの商店街があり、生活に必要なお店が充実
* 湘南新宿ライン・京浜東北線・宇都宮線・赤羽線・埼京線・高崎線の6路線利用可能で、交通の便がよい
* 総戸数3,373戸からなる大団地「赤羽台団地」の再生事業、駅周辺の再開発計画により、さらに活気がある街になることが期待できる
* 赤羽公園や赤羽自然観察公園などの公園も生活圏にあり、大人だけではなく、子供も生活しやすい
出典:アルヒ「本当に住みやすい街大賞 2019」
赤羽一番街商店街(「本当に住みやすい街2019」第一位に選ばれた赤羽は買い物環境が充実)

 赤羽には2つの商店街があり、日常の買物は赤羽駅周辺で充分。駅に直結した便利なショッピングセンター「ビーンズ」、駅前のイトーヨーカドー赤羽店があり、上質な魚介類や肉、野菜が揃う「富士ガーデン赤羽店」、少し歩くと大型店の「ダイエー赤羽店AEON FOOD STYLE」もあり、買物には困らない。

 そして、6路線を利用できる鉄道交通の利便性は最大の魅力だろう。JRの湘南新宿ライン2系統、埼京線、京浜東北線、宇都宮線、高崎線が使える。徒歩圏内には、東京メトロ南北線「赤羽岩淵駅」もあり、通勤・通学にも便利だ。

 鉄道の利便性でいえば、千葉県・船橋市や市川市も都心へのアクセスの良さで人気があるが、赤羽の強味は東京駅方面も新宿方面も同じようにアクセスしやすい点だろう。船橋や市川は、東京駅方面へは近いが、新宿や渋谷方面へは時間がかかる。その点、赤羽は東京駅にも新宿駅にも出やすいし、どちらへも20分もかからないで到着する。

 また、赤羽台団地の再生、駅前の再開発計画によって、マンションや商業施設の開発が行われ、今後のさらなる活性化が見込めることも評価のポイントになっている。そして自然観察公園などの自然が多く見られることも支持されるポイントになる。

 ところで、「本当に住みやすい街2019」で第2位選ばれたのは、東京メトロ丸ノ内線の「南阿佐ヶ谷」、3位はJR山手線の「日暮里」だ。これまで住みたい街として上位に名を連ねてきた「吉祥寺」「恵比寿」「目黒」「横浜」といった“垢抜けた街”とは異なる。憧れの住みたい街とは別視点で、いずれも住む上で手の届く地価で、住環境のバランスがいい街が並んでいる印象だ。

 では、これから赤羽の魅力を掘り下げて見よう。

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赤羽のある北区は子育て支援に力を入れており、
「子ども医療費助成制度」なども手厚い

 北区の人口は約35万2000人。東京都23区の北部に位置し、荒川を境に埼玉県川口市と、隅田川を境に足立区と隣接している。赤羽は北区の中でも最も賑やかな街のひとつ。交通立地の良さに加え、商業エリアとしても栄えている。また、近くには荒川河川敷の緑地もあり、自然が残る地域だ。人口比では、約四分の一が65歳以上だ。

世代別人口構成比(平成31年2月1日現在)
内訳 今月 構成比
14歳以下 36,410 10.35%
15歳〜64歳 227,820 64.73%
65歳以上 87,716 24.92%
合計 351,946 100%
<引用データ:「北区人口ビション」(案)平成27年11月(PDF)より>
<引用データ:「北区人口ビション」(案)平成27年11月(PDF)より「独自推計による北区の将来人口」>
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 今後、高齢者の増加は避けられず、将来的には人口比率もさらに高齢化へシフトする。人口全体としては緩やかに減少し、30万人をキープすると予想されている。生産年齢人口(15〜65歳)は減少していくが、年少人口(15歳未満)は2040年あたりまで増加傾向にあるため、人口はキープできるようだ。

 北区の合計特殊出生率(一人の女性が出産する子供の人数)は、2003(平成15)年まで減少し、それ以降は増加傾向に。2013(平成25)年には東京都及び特別区の平均を上回り、2014(平成26年)年には1.20となっている。子どもが増える傾向がうかがえ、若いカップル世帯が増えていると考えられる。

 こうした背景を受けて、北区でも子育て支援に力を入れている。例えば、「子ども医療費助成制度」だ。これは中学校修了前までの子どもを対象に実施していたが、平成23年7月から高校生等の入院医療費まで拡大している。子育て家庭の経済的負担を軽減する施策として、高校生までを対象にしている点でも、手厚い支援と言えるだろう。

引用データ:「北区人口ビション」(案)平成27年11月(PDF)より「合計特殊出生率の推移」
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世代間交流を促す政策も実施

 北区は高齢者が多いことから、三世代が同居し高齢者に配慮した住宅を建設する場合に助成を行う「三世代住宅建設助成」を実施しているほか、子育てや介護等を共助しあうために北区内に住む親世帯に近居して住宅を取得するファミリー世帯に対し、取得時の登記費用の一部を助成する「親元近居助成」など、住宅に関する助成をして世代間交流をサポートしている。

 例えば、子世帯が、親世帯の近隣マンションを購入することを想定しているのだろう。区内への転入を受け入れようとしている姿勢がうかがえる。

赤羽の地価は割安だった!

 赤羽が本当に住みやすい街なのかどうか。交通利便性、ショッピングの充実度はすでに説明した。通勤、通学に便利で、商業施設が多い点では暮らしやすいといえるだろう。

 では、肝心の地価はどうだろうか。JR埼京線「赤羽」駅周辺の土地価格の相場は、坪(3.3平方メートル)あたり約133.3万円になっており、池袋の282.7万円/坪と比べると半分以下だ。北赤羽(約164.4万円/坪)や浮間舟渡(199.9万円/坪)と比べても赤羽の土地価格相場は割安に感じられる。

 赤羽から池袋までJR埼京線で最短10分だ。この移動時間と地価を比べると、赤羽の地価は超・割安だといっていい。

 次に国土交通省の公示地価で赤羽周辺の地価公示価格見てみよう。平成30年調べでは、北区の「赤羽1丁目8番」付近で、約263万円/㎡となる。ほぼ駅前だけに単価が高くなるが、同じ場所で2年前(平成28年)は224万円/㎡で、1.17倍の上昇がみられる。

 駅から徒歩10分ほどの「赤羽西1丁目26」付近になると約47万円/㎡(平成30年)となり、駅前の約五分の一以下だ。同じ場所が平成28年には42万円/㎡だったことから、こちらも1.12倍の上昇となっている。

 今後、駅前の再開発などが進めば、さらに地価の高騰が見込まれる。そういう意味で、これからも地価の上昇傾向は続きそうだ。

せんべろで全国区の街へ

 赤羽が広く知られるようになったのは、「せんべろ」(=1000円でべろべろに酔えるという価格帯の酒場の俗称)の存在だ。いろいろな街に廉価な居酒屋はあるが、駅東側・南側の一角に集まっており、ほかの街から飲みに訪れるほど人気を得ている。

 赤羽駅からすぐの一番街には、昼間から立ち飲み屋をはじめ居酒屋が営業して、おでんやモツ焼きなどの店が、庶民的な味わいと価格で支持されている。最近では、わざわざ電車に乗って訪ねてくる若い女性や外国人も増え、観光スポット的な賑わいもある。また、漫画やTV番組で取り上げられることも多く、いまや全国区の飲み屋街として知られている。

駅近の中高層マンションが増加!? 

東横INN赤羽駅東口(赤羽駅東口には複数のビジネスホテルがある)

 赤羽は、駅前の通りから少し入ったところに中高層マンションが多く、赤羽駅近辺の中古マンションを検索すると100件ほどすぐに出てくる。また、2017年に東洋大学の赤羽キャンパスが出来たことで、学生が増え、賃貸物件もニーズが増える傾向にある。

 ファミリー層にとっては、分譲マンションも狙い目だが、赤羽駅西側の「赤羽団地」が再生されて、URの公団住宅「ヌーヴェル赤羽台」 (全12棟、1,895戸)に生まれ変わったことで、住まいの選択肢は広がっている。ここは、もともと旧日本住宅公団(現UR都市機構)により、昭和37年に建設された総戸数3,373戸の大団地だった。建物の老朽化や耐震性の問題があり、2000年に建て替えに着手し、2006年に一部、残りが2010年に完成した。

 賃貸の公団住宅ながら、オートドアロック、モニター付きドアホンや床暖房など最新設備が導入されており、間取りは1Kから3LDK+S(31㎡〜100㎡)のメゾネットタイプまで、単身者からファミリー向けが揃う。賃料は82,000円から254,500円、共益費4,900円となっている。12棟が建つ敷地内は、ゆったりした空間を確保し、夜は街路樹がライトアップされ美しい夜景が映える。

 また、団地再生で余った余剰地を売却することによって、デベロッパーが分譲マンションを計画しているとの話もあり、新築中高層マンションが増えると予想する人もいる。

 すでに地価が上昇傾向にあることを説明したが、2019年には「東横INN赤羽駅東口」(1月開業)や「ホテルリブマックス赤羽駅前」(10月開業予定)が新たに建設され、今後ビジネス上の出張や旅行などでも高いニーズが見込まれることが予想される。

住みたい理由は、名所や自然も多いこと

 これまで、下町感が漂い親しみやすさはあるが、逆に品がないイメージを持たれがちだった赤羽。確かに、明るいうちから酔っ払いが千鳥足で歩く姿は褒められたものではないが、そうしたイメージも変わりつつある。

 2017年にオープンした東洋大学の赤羽キャンパスによって学生が増えた。

 また、ビジネスホテルが次々と建ったことで、出張して来たスーツ姿のビジネスマンたちが多くなり、時間帯によって街の表情が大きく変わっている。赤羽は変化しつつあるということだ。

 それとは別に、もともと住んでいる人たちにとって、住みたい理由は荒川の河川敷の自然や公園も多いことだろう。赤羽駅から荒川河川敷へ出て、神社仏閣、緑地、水門など歴史的な場所を辿る散策コースもある。特に荒川沿いは人気エリアで、BBQや釣りも楽しめ、休みの日には多くの家族連れやカップルで賑わっている。

 また、春になると「荒川赤羽桜堤緑地」は桜が咲き誇る名所として親しまれている。ソメイヨシノが108本植えられ、そよぐ川風を浴びながらプロムナードを歩く気分は爽快だ。赤羽駅の西側にある「赤羽自然観察公園」は、里山のような自然が広がるところで、田圃があったり木道橋や古民家、多目的広場、デイキャンプ場と平和の森で静かな時間を過ごせる。こうした自然が身近に感じられる点も赤羽の魅力なのだろう。

防災のための洪水ハザードマップ

 赤羽のある北区は、荒川に接していることで昔から洪水被害を受けて来た歴史がある。堤防工事などで洪水のリスクは低減したものの、もともとの地勢的な弱点は克服できない。そのため北区では災害に備え、洪水ハザードマップを作成し、日頃から防災意識の啓蒙に努めている。

 このハザードマップは、「河口から埼玉県深谷市および寄居町までを対象に、現時点の荒川の河道および洪水調節施設の整備状況において、水防法の規定により定められた想定最大規模降雨(荒川流域の72時間総雨量632mm)で荒川が氾濫した場合の浸水状況、および、家屋倒壊等をもたらすような氾濫の発生が想定される区域(家屋倒壊等氾濫想定区域)を、国土交通省がシミュレーションにより予測」したものとなっている。

 では、72時間で総雨量が632mmになることはどの程度起こりうるのだろうか。日本の年間降水量は平均で1,700mmほどなので、その3分1の約600mmの雨が一気に降るという想定だ。

 まだ記憶に新しい2018年7月に起きた西日本豪雨を思い出していただきたい。台風7号の影響で九州から広く西日本に雨が降り続き、7月6日から8日にかけて九州、四国、中国地方で、豪雨災害として、死者200人を超え甚大な被害をもたらした。このときの降雨量は、高知県馬路村で72時間に1,319mmの雨が降ったほか、岐阜県郡上市で868mm、佐賀県佐賀市では675mmを記録。西日本の10箇所以上の観測所で72時間総雨量が632mm以上を記録している。

 つまり、昨年の西日本豪雨規模の豪雨が荒川流域を襲えば、荒川は氾濫する可能性があるのだ。ハザードマップによると、京浜東北線よりも北東側エリアの大半は浸水し、東京メトロ南北線より北東側エリアの大半は家屋の倒壊などが想定される「家屋倒壊等氾濫想定区域」となっている。

 地球温暖化が叫ばれ、世界各地で異常気象が起きていることを考えれば、荒川が氾濫するリスクがないわけではない。隣接する足立区や荒川区、江東区なども低地であるため、荒川が氾濫した際の被害は甚大だと想定されている。

 その点、赤羽駅の西側は高台となっており、水害とは無縁であることがハザードマップからわかる。水害を避けたいのであれば、京浜東北線よりも南西側に住むべきだ。

【関連記事はこちら】>>北区(東京都)の川と水害の歴史 
〜川辺の住環境と洪水ハザードマップを読み解く〜

地震訓練の参加人数が多い

 災害は水害だけではない。北区では地震に備えた「シェイクアウト」訓練参加を積極的に行っている。

 このシェイクアウトとは、「地震時の安全確保行動を身につけるため」の取り組みで、もともとアメリカのカリフォルニア州で生まれた一斉防災訓練のこと。「Drop(姿勢を低く)、Cove(体・頭を守って)、Hold on(揺れが収まるまでじっとして!)」の3つのアクションを実践することで、万一の場合に地震から身を守る行動を素早くとれるための訓練になる。

 学校や職場などグループや組織単位で主催し、地域の講習会へ参加後、実際の訓練を各主催者で実施する。地震発生の合図で、例えば教室なら姿勢を低くして机の下に頭や身体を隠して守り、揺れが収まるまでそのままの状態をキープするという、3つのアクションを素早く実行するのである。

 こうした訓練を定期的に繰り返すことで防災意識を高めているのである。日本シェイクアウト(※)の登録者数は、まだ約630万名ほどだが、都内では千代田区や杉並区、北区が登録しており、なかでも北区の登録者数は9,800人を超え、都内23区内で一番多い。

 こうした防災意識の高い地域は、コミュニティの醸成にも大いに役立ち、安心して住まう地域として評価できるポイントだろう。 ※ 日本シェイクアウト http://www.shakeout.jp/

まとめ 防災面での弱点をカバーする魅力がある?

 地価が割安と見えるのは、やはり防災面の弱点があるのが一因だろう。とはいえ、交通利便性や商業施設の充実度が高く、万が一の災害にも備える心構えがある地域だということがわかると、赤羽の不動産の資産価値がまだ増大する余地があると言えるのではないだろうか。

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