世界製薬大手の中で唯一の非上場会社であり、業界再編に距離を置く。今後も単独で成長を目指すのか。戦略と勝算を聞いた。

ベーリンガーインゲルハイム会長<br />アンドレアス・バーナー<br />大型M&Aなき家族経営で<br />革新的な新薬を生み続ける

──売上高規模で肩を並べていた武田薬品工業は2011年に約1兆円を投じて欧州の製薬会社を買収し、さらにはワクチン事業の世界展開へ乗り出すことを決断した。生き残りを賭けて大型M&Aや事業の多角化に踏み切る競合が多い中、自主独立、研究開発特化型という戦略に転換はあるか。

 当社の方向性はなんら変わらない。大きなM&Aに頼らず、家族経営で自社の研究開発に投資し、自力で持続的に成長していく。

──動物薬事業でワクチンを展開しているが、世界で市場が拡大している人用のワクチンに参入する可能性は。

 ワクチンは世界のヘルスケアにおいて重要なテーマだが、大手各社が手を出している中で今更やらない。“新たな”という点では、バイオシミラー事業(特許が切れた他社のバイオ医薬品と同様の薬を開発、販売するビジネス)に乗り出すことを決めた。

──化学合成で作る低分子医薬品の後発薬(ジェネリック医薬品)についても事業化はあるか。低分子の後発薬は裾野が広く、製薬市場で高い成長が見込まれる新興国を開拓する武器になる。大手各社が参戦している。

 事業化はない。確かに新興国市場の成長は低分子の後発薬によるところが大きい。しかし後発薬事業がないままでも、当社はそうした市場で成長できている。

 バイオシミラーは開発も製造も実に複雑で、低分子の後発薬のように単純にマネして作れるものではない。当社が培ってきたバイオ医薬品の専門技術が生きる世界だ。