自社の“売り”を
きちんと情報発信する

 そこで山口氏が提唱するのは、「日本が持っているものと、海外が求めているものをうまくマッチングさせて、新しいビジネスモデルをつくり上げていく海外ビジネス」だ。例えば、「スモールサン」に参加するあるグラビア印刷会社は、タイに工場を進出するため現地を視察したところ、地元資本の印刷会社が自社よりも優れた最新印刷設備を持っていることに驚き、「工場だけを持ってきても、とても太刀打ちできない」と考えた。

「行き詰まった同社は、企業の海外進出を支援する専門家に相談しました。調査を重ねたところ、設備ではかなわないながら、出来上がる印刷物の品質は圧倒的に日本のほうが優れていることがわかった。そこで専門家の提案の下、現地の印刷会社に生産管理などの技術を提供する代わりに共同出資の販社を設立して、売り上げの一部が日本にも入ってくる仕組みをつくり上げたのです」

 技術提供だけなら一時的なコンサルティング料で終わってしまうところだが、専門家が提案した新しいビジネスモデルのおかげで、持続的な収益基盤を確保することができたのである。

 海外で求められる日本の技術は多いが、実際に現地では何が求められているのかに気付かないまま、宝の持ち腐れとなっていることも珍しくないと山口氏は指摘する。

「まずは、経営者自らが情報ネットワークの中に身を置くという姿勢が必要です。自社の“売り”をきちんと理解した上で、積極的に情報発信していくこと。そして、よりよい成果を得るために専門家や支援サービスを徹底活用することが海外事業を成功させるためのポイントではないでしょうか」 

海外に直接投資をしている企業のほうが、していない企業よりも国内従業者の伸びは大きい。「企業の海外進出が国内産業の空洞化をもたらす」という懸念に根拠がないことは明白だ。(「中小企業白書2012年版」第2-2-22図より引用)