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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第65回】 2012年6月6日
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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

若者に投資しない社会は没落する
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

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 ここまではわかりやすい事例として、雇用者報酬のデータを紹介したが、同じようなことが企業の人的投資でも起こっているはずだ。昔から日本企業は、社内にある様々なリソースを投じて、正社員として入社した若者に手間隙かけて企業内教育・訓練を施してきた。OJT(オージェイティ)はその代表例である。どこの職場でも、中間管理職や先輩は、若手指導に随分と力を尽くしたものだ。

 当時は、手厚い人的投資は、次世代の若者たちが将来の生産性を発揮するために当たり前だと考えられた。この10数年でそうした企業カルチャーはすっかり薄らいでしまった。

 翻って、昨今、企業内では、人員削減で職場の人数が少なくなったとき、「1人1人がパフォーマンスを上げて、業績を高めよう」と気炎が上がる。もしも、個々のパフォーマンスを高めるための各種投資が、人員削減とともに同率で絞り込まれたままならば、成果の向上など、単なる精神論に終わるのではないか。

採用抑制は
人的投資の抑制でもある

 一方、大学生の就職難が言われて久しい。筆者は、これだけ少子化が問題視されているのに、大学生の就職難に対して同等に批判する声が相対的に少ないことには驚く(ここでは、あえて、学力低下とか、進学率の上昇は議論しない)。

 問題を経済成長に絞って考えると、筆者は企業の採用抑制が、人的投資の抑制に直結していることが深刻だと考える。2012年3月に卒業した大卒者の中で、「一時的な職に就いた者とそれ以外の者」、つまりフリーターや無業者に当たる者は11万人もいる(図表2参照)。

 1991年にその人数が2.6万人だったのと比べると、最近は4倍以上である。11万人もの若者を、企業が能力開発もせずにいるのは、まことにもったいない。20歳代に鍛えられた経験こそ、その後の勤労人生の糧になる。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

しまもと・こうじ/1990年、東京大学卒業、日本興業銀行入社。調査部門で金利分析や経済予測を担当。2000年からBNPパリバ証券で投資調査本部長兼チーフストラテジストとして金融市場予測を担う。日本経済新聞社の債券アナリスト・エコノミスト人気調査の債券部門では06、08年に1位。金融庁の金融市場戦略チームや金融税制研究会、行政刷新会議の事業仕分けなどに参加。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、島本幸治、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

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