ここまではわかりやすい事例として、雇用者報酬のデータを紹介したが、同じようなことが企業の人的投資でも起こっているはずだ。昔から日本企業は、社内にある様々なリソースを投じて、正社員として入社した若者に手間隙かけて企業内教育・訓練を施してきた。OJT(オージェイティ)はその代表例である。どこの職場でも、中間管理職や先輩は、若手指導に随分と力を尽くしたものだ。

 当時は、手厚い人的投資は、次世代の若者たちが将来の生産性を発揮するために当たり前だと考えられた。この10数年でそうした企業カルチャーはすっかり薄らいでしまった。

 翻って、昨今、企業内では、人員削減で職場の人数が少なくなったとき、「1人1人がパフォーマンスを上げて、業績を高めよう」と気炎が上がる。もしも、個々のパフォーマンスを高めるための各種投資が、人員削減とともに同率で絞り込まれたままならば、成果の向上など、単なる精神論に終わるのではないか。

採用抑制は
人的投資の抑制でもある

 一方、大学生の就職難が言われて久しい。筆者は、これだけ少子化が問題視されているのに、大学生の就職難に対して同等に批判する声が相対的に少ないことには驚く(ここでは、あえて、学力低下とか、進学率の上昇は議論しない)。

 問題を経済成長に絞って考えると、筆者は企業の採用抑制が、人的投資の抑制に直結していることが深刻だと考える。2012年3月に卒業した大卒者の中で、「一時的な職に就いた者とそれ以外の者」、つまりフリーターや無業者に当たる者は11万人もいる(図表2参照)。

 1991年にその人数が2.6万人だったのと比べると、最近は4倍以上である。11万人もの若者を、企業が能力開発もせずにいるのは、まことにもったいない。20歳代に鍛えられた経験こそ、その後の勤労人生の糧になる。