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デフレと人口動態の関係〜日本だけが特殊〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・5月29日レポート「硬直的な労働慣行がデフレの犯人?」において、日本固有の労働慣行がデフレをもたらしているという説について批判的に解説した。そして、「総需要不足」それに関係する「金融緩和の不徹底」がデフレをもたらしている、というオーソドックスな考えをご紹介した。

・このレポートに対して以下のようなフィードバックを頂戴した。「デフレの原因は単純です。人口が減少しているからです。(働き手の減少で)総所得が減れば支出も減る」。人口・働き手の数が減るからデフレになる、ということである。これが日本固有の問題であり、日本だけが陥る長期デフレを説明している、というのは直感的に理解し易い。

・日本において、働くことが可能なヒトの数(一般的には15-64歳人口)は1990年代後半から減少している。2010年から数年は、「働き手」は年率1%以上減少するため、これだけで少なくとも0.5-1.0%程度は経済成長率(GDP)を押し下げる要因になる。2000年代以降の日本経済の低成長に、この人口要員が影響していたことは否定できない。

・ただ、働き手の人数が減ることによる成長率低下が、デフレにつながるかどうかは実は何とも言えない。それは、経済がデフレになるかどうかは、経済全体の需要と供給の格差(ギャップ)で決まるからである。供給>需要の状況となればデフレとなるが、働き手が減ることは需要を減らすと同時に供給も抑制する。だから、需要と供給のバランスにどのように影響を及ぼすかは分からない。

・実際に、日本と同様に人口動態の変化で働き手の人数が減る国で、デフレに至らないケースがある。この事実は、国の公式見解である内閣府の経済財政報告において示されている。以下はその抜粋である。「90年から2010年にかけて、生産年齢人口(注:働き手の数)の変化率と物価上昇率の間には明確な相関関係は確認できない。95年以降、日本のほかに、イタリアやドイツ、ハンガリー等において生産年齢人口の減少が見られたが、同時に物価下落が生じた国は日本だけである。」

・これは、「国の公式見解」に近いと思われるが、念のためデータを確認してみた。主要33カ国を対象に、2000年代の働き手の数(生産年齢人口)の伸びとインフレ率の関係を調べると、両者の相関係数は0.105とほとんど関係がないことが分かる(グラフ参照)。


・例えば、ドイツは2000―10年に働き手の数は日本と同様、年率-0.3%減少しているが、同時期のインフレ率は+1.6%と、他の先進国と同程度のプラスのインフレ率である。一方、香港のように+1%働き手が増えていても、同期間のインフレ率が+0.5%と極めて低い国もある。こうした諸外国の実績をみると、インフレ(物価上昇率)には、「働き手」以外の要因が大きく影響しているということになる。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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