東大を独学で現役合格し、さらに東大大学院を受験で合格。学生時代から取得した資格の数は600を超える。これまで20年以上、試験をずっと受け続けている著者だからわかる、点数をとるワザを紹介していきます。小手先のテクニックではなく、長く勉強し続けていくために必要な戦略が詰め込まれている東大→東大大学院→600個超保有の資格王が教える点数稼ぎの勉強法から、一部抜粋して紹介していきます。東大に受かる人や本当に頭のいい人の学ぶ姿勢は、必読です。

勉強に必要な3つの教訓

 勉強法や記憶術の本に必ず出てくる重要ワードとして、「エビングハウスの忘却曲線」があります。

「人は覚えたことを1時間後には56%忘れ、1日後には74%忘れる」などと記載されている本も多いのですが、これは忘却曲線の解釈としては実は間違いです。忘却曲線の縦軸は単純な「記憶保持率」ではなく、「節約率」というまったく別の指標なのです。

 節約率とは、一度勉強して忘れてしまったことを再び覚え直すのにかかった時間が、最初に覚えたときと比べて何%削減できたかという数字です。そのため、忘却曲線の解釈としては「一度覚えて忘れてしまったことを1時間後に覚え直すためには、最初に覚えるのにかかった時間の56%の時間を要する」といったほうが正確です。

 エビングハウス氏がただ「時間が経ったら忘れる」ことを言いたかっただけであれば、節約率という特殊な概念をあえて持ち出すまでもなく、記憶保持率のグラフをつくればそれでよかったはずです。

 ここであえて節約率という指標が使われているのは、勉強は「忘れること」「学び直すこと」を前提として取り組むべきだということをエビングハウス氏が特に強調したかったからではないでしょうか。

 ある暗記事項に対して一度でもふれた経験があれば、次回以降ふれたときに習得にかかる時間が短くなる、ということが本質なのです。

(なお、忘却曲線の実験では「無意味な音節」を記憶するプロセスによって節約率が算定されています。もっと内容に意味のある暗記事項を覚える場合であれば、忘却の度合いはもっとゆるやかになると考えられます)

 ここから導き出せる教訓は、
[1]人は忘れる生き物だから、忘れたら覚え直すことを前提として勉強する
[2]忘れてしまうことに対して落ち込んだり、悲観的になったりする必要はない
[3]「忘れて覚え直す」ことは決して無駄な作業を繰り返すことにはならず、「覚え直すのに必要な時間」は確実に短くなっていく

ということです。

 これを意識できているかいないかで、勉強がうまくいかない場面での気の持ち方や行動指針が大きく変化します。

 人は忘れてしまうものだと割り切ってとらえることができれば、勉強の過程で必要以上にストレスをためたり、ネガティブな気持ちに陥ってしまったりする場面は確実に減らせます。

 長いスパンの勉強では、スランプや停滞はつきものです。そんな中でも勉強を継続していくためには、思い切った開き直りも必要なのです。

<参考文献>
Hermann Ebbinghaus Memory: A Contribution to Experimental Psychology, Evergreen Review, Inc.