アップル「アップルはこれから駄目になる」と言われながら、なぜ1兆ドル企業に成長できたのでしょうか Photo:iStock/gettyimages

2011年にジョブズが死去した時、多くの専門家は「アップルはこれから駄目になる」と予測した。ところが、ジョブズの後を継いだCEOティム・クックはアップルの売り上げを伸ばし続け、2018年夏にはビジネス史上初の時価総額1兆ドルを突破。iPhoneの累計販売台数は15億台を超えた。
 
ジョブズ亡き後のアップルでは一体何が起こっていたのか。そして、2019年1月に起きた「アップルショック」はアップルの終焉のはじまりなのか。『アップル さらなる成長と死角』の著者であり、アップルでの勤務経験を持つ竹内一正氏がその舞台裏を3回にわたって解き明かしていく。

30兆円のキャッシュを
どうやって積み上げたのか?

 2689億ドル――約30兆円。

 これは2017年度までにアップルが積み上げたキャッシュであり、スウェーデンの国家予算を上回る金額だ。アップルの財務体質は盤石だと世間は思っている。

 そして、このキャッシュはiPodやiPhoneといった画期的な新製品がもたらしたものだと誰もが考えているが、それはA面の話に過ぎない。

 B面では、ティム・クック率いるオペレーション部門が八面六臂の活躍をして、財務体質の改善を劇的に成し遂げていた。オペレーションとは、物流や在庫管理、サプライヤー管理を行う“裏方”の部署で、華やかさとはまったく縁がなく、地道で泥くさい仕事である。

 そもそも、世界を驚かせる新製品を生み出すアップルでは、開発部門やデザイン、マーケティング部門が花形だ。一方、オペレーション部門は縁の下の力持ちで、アップルのヒエラルキーでは“最下層”と言っていい。ティム・クックは大学を出てからIBMやコンパックなどでこのオペレーションの仕事に携わってきた。

 アップルに入ったティム・クックはジョブズの下、オペレーションの責任者としてアップルの工場を次々と閉鎖して、鴻海などサプライヤーに生産委託し、在庫回転率を上げ、赤字から黒字へ財務体質を劇的に改善したのだ。