地方における公共事業は、いわば“国内ODA”だと批判されることがある。投下された資金は、族議員を始めとする有力者たち、業界団体であるゼネコンなどに幾度も中抜きされ、地元の人々、家計には十分に回らない。建設された箱物自体が必要不可欠なものではなく、経済活性化に役に立たないことが多いことも、ODAによく似ている。

 では、どうすればいいか。経済学的に言えば、最も効率がいいのは、直接家計におカネを配ることである。そうすれば、おカネの配分権限を中間者に握られ、また中抜きされることもない。不要な道路や公共施設建設に、資材や資源、労働力が無駄に使われることもない。

 前者を「間接補助」、後者を「直接補助」と呼ぼう。前者は戦後自民党が築き上げた国土均等発展、地域間や家計間の格差を是正する所得再配分システムである。政治と末端の中間に位置し、双方を結び付け、分配する権力、裁量を握っていた代表例が農協、郵政、医師会、ゼネコンといった業界団体であった。

 それに対して、民主党は、子ども手当ての支給、高速道路無料化、農家戸別補償などの直接補助政策を掲げている。つまり、それは各種の業界団体を飛び越えて所得を再配分する政策である。前者が、公共事業を通じて供給側(企業、産業)をテコ入れする手法であるなら、後者は、需要側(家計、消費者)に焦点を当てる政策、と言ってもいい。

 この直接補助政策を民主党は高らかに掲げ、総選挙に圧勝、悲願の政権を手にした。そして、この未知なる与党には、ある「踏み絵」が待っている

 もう少し、説明を加えよう。中間業界団体を通じて末端にまでおカネを回す間接補助政策は、二つの柱に支えられていた。一つは、補助金、助成金などの特別な予算措置であり、もう一つは、法規制あるいは裁量規制によって生じる超過利潤である。前述した農業、郵政関連事業、医療などが典型的な規制保護産業であったことは、言うまでもない。

 ところが、日本経済が低成長時代に入り、そこにバブル崩壊が加わって長期低迷に至ると、補助金や助成金などの優遇措置の原資である税収が減少した。公債発行による借金も世界一の水準に達した。そうして、税金が流れ出す蛇口は止まり、還流ルートは細る一方になった。一つの柱が崩れそうになれば、もう一つの柱にしがみつこうとするのは理の当然である。中間業界団体は、規制保護による既得権にますます固執するようになった――。