「企画プレゼンが通らない」「営業先の反応が弱い」「プレゼン資料の作成に時間がかかる…」など、プレゼンに関する悩みは尽きません。そんなビジネスパーソンの悩みに応えて、累計18万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』シリーズの最新刊『プレゼン資料のデザイン図鑑』が発売になりました。この連載では、同書のコンテンツを紹介しながら、著者・前田鎌利氏がソフトバンク在籍時に孫正義社長から何度も「一発OK」を勝ち取り、ソフトバンク、ヤフーをはじめ約600社に採用された「最強のプレゼン資料作成術」のエッセンスをお伝えします。

モヤモヤする「プレゼン」をしている人が犯している、決定的な「過ち」とは?

プレゼン資料は「読ませるもの」ではなく「見せるもの」

 早速ですが、この約25秒の動画をご覧ください(お急ぎの方は、この動画だけご覧いただいてもポイントを把握いただけます)。

 いかがでしょうか?

 ビフォー・スライドを数秒で理解するのは非常に困難ですよね? このスライドを見てモヤモヤしている人の顔が思い浮かびます。そして、このようなスライドを何枚も見せられた相手が、プレゼンに対してポジティブな印象をもつこは、まずないと断言できます。プレゼンが成功する確率は、限りなくゼロに近いでしょう。

図1

 なぜ、そうなってしまうのでしょうか?

 答えは簡単です。メッセージが「文章」になっているために、スライドを理解するために、”読まなければならない”からです。相手をモヤモヤさせるプレゼンの原因で、最も多いのがこのパターンなのです。

 プレゼン資料は“読ませるもの”ではなく“見せるもの”です。一字一字を読んで、ようやく意味がわかるのではダメ。パッと見た瞬間に、意味がスッと頭に入ってくるようにしなければなりません。相手の脳を「意味」を読み取ることに使わせるのではなく、内容を吟味することに使ってもらわなければならないのです。

 そのためには、どうすればよいか? 方法はただひとつ。文字数を減らすことです。

 人間が一度に知覚できる文字数は、少ない人で9文字、多い人で13文字と言われています。瞬間的に文字と意味を同時に把握することができる文字数は13文字が上限。これを超えると、意味をつかみ取るのに「読む努力」が必要になるのです。日本最大のニュースサイト「Yahoo!」のニューストピックの見出しも13文字が上限になっているのも、おそらく、これと同じ理由だと思います。

 ここで、改めて上のビフォー・スライドをご覧ください。13文字以内のメッセージがほとんどないことがおわかりいただけると思います。ここが、このスライドの分かりにくさの最大の原因なのです。

 13文字以内にするためには、下の例文のように、文章にするのではなく、体言止めで端的な表現にするようにします。また、「~のための」「~について」などの平仮名や、主語述語も不要。伝えるべきポイントを明確にして、付随的な要素はすべてカットするようにしましょう。

図2

 もちろん、13文字以内にするために、「意味不明」なメッセージになってしまっては本末転倒です。どうしても13文字以内にすることができない場合には、改行を使って1行13文字以内になるようにするようにしてください。

明朝体のフォントは視認性が低い

 さらに、上のビフォー・スライドには問題点があと2つあります。

 そのひとつが、使用フォントです。このスライドでは明朝体を使っていますが、PC画面で見る分にはそれほど問題はありませんが、遠くから見ると視認性が低いので、プレゼン資料ではできるだけ使わないようにしたほうがよいでしょう。

 プレゼン資料で最も重要なのは「視認性」です。そのためには、次のフォントをデフォルトにすることをおすすめします。これが、最も「視認性」の高いフォントだからです。

【PowerPoint】HGP創英角ゴシックUB

【Keynote】ヒラギノ角ゴStdN

 使用フォントを「これ」に決めてしまえば、プレゼン資料をつくるたびに迷う必要もなくなり、仕事が効率化するメリットもあります。

「青」と「赤」を使い分ける

 もう1つの問題は、カラーの使い方です。

 ビフォー・スライドでは、一番下のメッセージを「赤」にしていますが、私はおすすめしません。目立たせたい部分にカラーを施すのはOKなのですが、ここでは「赤」ではなく「青」を使ったほうがよいからです。

 色の選択には、世界共通のルールがあります。世界中の信号が「青=進め」「赤=止まれ」で統一されているように、「青」は「良好、順調、安全」のシグナルで、「赤」は「不良、不安、危険」のシグナルとして使われています。

 プレゼン資料においても、「売上増」「経費削減」などポジティブなメッセージは「青」、「売上減」「経費増」などネガティブなメッセージは「赤」に統一するとわかりやすくなるのです(下図参照)。これを、「シグナル効果」と言います。この「シグナル効果」を踏まえると、上のビフォー・スライドで「赤」にしているメッセージは、ポジティブ・メッセージですから、「青」を使用するのが適切なのです。

図3

 このルールを社内で統一すると、さらに効果的です。なぜなら、経営陣から現場社員まで全員が、「青=ポジティブ」「赤=ネガティブ」という共通認識をもっていれば、スライドを見た瞬間にスライドの意図することが伝わりやすくなるからです。その分、情報共有から意思決定までが迅速化することになるのです。

 ここまでお伝えしてきたことを復習しましょう。ビフォー・スライドの問題点は3つあります。改善策と合わせて、以下に列挙します。

1 【問題点】メッセージが長い→【改善点】13文字以内にする

2 【問題点】明朝体のフォントを使用→【改善点】HGP創英角ゴシックUB

3 【問題点】「赤」を使用→【改善点】「青」に変更(シグナル効果)

 最後に、これらの改善を加えたアフター・スライドを掲示します。ぜひ、皆様も、これを参考に、わかりやすいスライドをつくってください。

図4