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政策期待で揺れ動くマーケット〜3年半ぶりの中国の利下げ〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・欧州債務問題の浮上と景気減速の兆候を背景に、5月初旬から世界的に株式市場は大きく調整したが、今週、政策対応への期待から市場はやや落ち着きを取り戻している。昨日レポートで紹介したが、危機の震源地である欧州では、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和、そしてスペインの銀行への支援策への期待が高まった。。

・昨日(6月7日)は、イェレン米FRB副議長がバランスシートを拡大させる金融緩和策に言及し、FRBによる早期金融緩和への期待も高まった。その後、昨晩のバーナンキ議長の発言の中で、金融緩和に直接言及しなかったことが市場の失望を誘ったとされた。ただ実際には、「必要に応じて行動を起こす用意がある」「経済活動のさらなる加速が求められる」など、従来と同じ見解を示している。インフレ率が2%前後にあっても、雇用最大化の目標に従い、FRBが金融緩和を繰り出す姿勢は変わっていない。

・市場の混乱を収束させる各国の政策対応への期待が浮上しているが、これらへの解釈・評価が定まらず市場が一喜一憂する不安定な状況にあると言える。今後のスケジュールを考えると、目先は、混乱の震源地であるギリシャの政局が見え、スペインの銀行への支援策が固まるまで、こうした状況は続くのかもしれない。

・各国の政策への期待という点で、昨晩(6月7日)発表された中国人民銀行による政策金利の引き下げも重要だろう(グラフ参照)。米欧中の3極で景気刺激・金融緩和で足並みが揃えば、市場心理への影響は無視できない。実際に中国は政策金利を低下させる余地が大きく、政策対応で経済の姿が変わりうる。


・ただ、先進諸国と異なり、中国の場合金融政策の手段は政策金利の変更だけではない。今回の3年半ぶりの利下げにより金融緩和を一段と進めたが、先進諸国と異なり、金利低下がそのまま景気刺激策となるかはっきりしない。というのも、貸出金利の水準だけではなく、銀行に対する指導・規制などが銀行の貸出行動に大きく影響するためである。

・既に預金準備率は下がっているが、中国の銀行の新規貸出金額は3月に大きく増えた後、4月に再び前年水準を下回るなど安定していない(グラフ参照)。銀行の預金総額に対する貸出比率(=預貸比率)の規制で、銀行が貸出を増やすことができないことなどが背景にあるとされている。このため、金融緩和策が効果を十分発揮していない可能性がある。


・今回の政策金利(貸出預金の基準金利)変更に伴い、中国の銀行は、貸出金利下限を基準金利の80%まで引き下げ、預金金利上限を基準金利の110%まで引き上げ、が可能になる。銀行業務の自由化という長期的な流れだけではなく、今回の措置で、仮に銀行の経営判断で預金・貸出の双方を増やせるようになれば、金融緩和策の効果が現れ、景気減速の歯止めにつながる可能性が高まる。

・銀行貸出抑制策が緩和され、既に報道で伝えられている鉄鋼などの大型投資案件の認可、家電など消費刺激策など財政政策が効き始めれば、銀行貸出も増え始める。来週発表される5月分新規銀行貸出が増加傾向にあることが確認されれば、金融緩和を含め政府の景気刺激策の効果が現れていると評価できる。中国の景気刺激策に対する市場の期待が定着するには、そうした実績が必要かもしれない。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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