デジタル財と消費税

 5月26日付の日経新聞は一面で、「消費税ゼロ 海外から配信 電子書籍や広告、楽天など検討 国境越えた取引非課税、外国企業と同じに 」と題する記事を掲載している。

 内容は、「海外拠点から日本に電子書籍や広告を配信すると、国外取引になるので、消費税がかからずに国内向け配信ができる。そこで、楽天などインターネット関連の大手企業は、海外ネット大手と競争条件をそろえるため、海外拠点からの配信の検討に入った」というものである。

 実は、国境を越えて事業者から直接個人に、音楽コンテンツや電子書籍などの電子媒体(以下、デジタル財)の取引が行われるようになると、消費税の課税が困難になる、という問題は、ずいぶん前から世界の課税当局間で話題に上り、OECDなど国際的な場で検討が行われてきた問題である。

OECDのガイドライン

 インターネット経由で、個人が音楽や映画などデジタル財の配給サービスを外国から受ける場合、税関を通らないので、消費税を課税する方法はない。本人が申告するということが考えられるが、そのような人はほとんどいないだろう。だから、その実効性は極めて薄い。

 しかしこれを野放しにすると、伝統的な取引(を行っている事業者)との間に課税上の中立性を欠き、公平性を損なうばかりか、税収にも不測の影響を及ぼすことになる。また、最終的には、国家間の税収配分という究極の問題につながって行く。

 この問題は、一国だけでの検討・対応には限界があるので、国際的な場(具体的にはOECDの租税委員会の場)で、民間事業者も加わって議論が行われてきた。そして、事業者間取引(BtoB取引)については、リバース・チャージ(輸入事業者が自ら申告し仕入れ税額控除<第24回参照>で返してもらう方法)など有効な対応が提言され、EU等で実行に移されている。