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日本と南欧諸国の共通点〜株価低滞の背景〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・先週半ば以降、スペインの銀行へのEUによる資本増強策に対する期待から、マーケットは若干落ち着きつつある。銀行の破綻懸念から売り込まれていたスペイン株が反発、異常な低水準まで低下していた米国10年金利も一旦下げ止まった。

・日本株も先週半ばから下げ止まりの兆しをみせているが、先週一旦TOPIXがバブル崩壊後の安値を下回り、足元の株価水準はリーマンショック後最低水準に止まっている。過去2ヶ月、米国やドイツなど先進国株も総じて調整し短期的には似た値動きをしているが、日本と異なり2009年の大底との対比ではかなり高い水準にある(グラフ参照)。


・2009年以降の株式市場のパフォーマンスをみると、日本は、米国やドイツなどより、同様にリーマンショック後の安値に沈み債務危機に直面するスペインなどの南欧諸国と同列に評価されている。日本は金融危機には至っていないが、株式市場のメッセージは、「日本=スペイン、イタリア」ということである(グラフ参照)。


・これについては様々な見方がある。「日本は南欧諸国と同様の財政危機にある」から、その帰結として株価パフォーマンスが同じである、という考え方がある。ただ、日本の国債金利は米国債などと同様に大きく低下している。財政赤字や、金融機関の貸し渋りが、日本の成長や企業業績に悪影響を及ぼしているとは言いづらい。

・これに対しては、「財政状況が深刻な日本は、いずれ南欧諸国と同様の運命を辿る。株式市場は将来のそうした事態を想定している」という反論もありえるだろう。この可能性が全くないとは言わないが、ユーロという共通通貨の「足かせ」にとらわれない日本は、現在の南欧諸国が直面する状況に陥る可能性はかなり低い。

・「財政危機」よりも、株価が同様に低迷する日本と南欧諸国についてはシンプルな共通点がある。それは、経済全体のパイ(名目GDP)が増えてないことである。イタリアやスペインなどの名目GDPは、2011年後半から縮小方向に転じている。国債金利上昇と緊縮財政が重なり、経済活動に強烈な収縮圧力がかかっているからだ(グラフ参照)。このため企業業績も悪化し、株安が止まらない。


・一方、日本は、大震災のショックに加えて物価下落が止まらず、2011年に経済規模(名目GDP)の縮小が続いた。企業は、リーマンショックで失った経常利益の半分を2010年度までに取り戻したが、経済規模の縮小が続く中で、業績改善・自律的な景気回復の持続性に疑問符がつきやすい。そして世界的に株式市場が動揺すると、デフレ予想が強まるため円高が進み、経済活動や株価に調整圧力がかかる。

・株価停滞が顕著な南欧諸国と日本においては、「経済の規模縮小」という共通の要因があるわけだ。そして、日本は、財政赤字や金融システムの問題ではなく、「デフレの長期化」が名目経済の規模縮小をもたらしている。また、日本では、2012年前半は復興需要(財政政策)により、(南欧諸国と異なり)経済成長が底上げされているが、事態は変わっていない。デフレ圧力が何より大きいということだろう。

・日本と南欧諸国についてそれぞれ経済環境が異なるため、具体的な処方箋は異なる。ただ、双方ともに名目経済の規模縮小に歯止めをかける対応が、株式市場の停滞打破に必要と思われる。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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