金融政策の目的は物価の安定と
実体経済の健全な発展

 欧州の債務問題、米・中の景気減速、日本の円高など、追加金融緩和に向けた市場の期待を強める要素が連なっている。一方、追加緩和が実体経済を刺激する経路はますます細くなっている。

 金融政策がどんな経路を経て効果を発揮するにせよ、その目的は物価の安定と実体経済の健全な発展であろう。たとえば日銀法第2条は、「物価の安定」を通じて「国民経済の健全な発展に資する」としている。

 米国の連邦準備法(Federal Reserve Act)も、金融政策の目的として“maximum employment”(雇用の最大化=実体経済の代理変数)、“stable prices”(物価の安定)、“moderate long-term interest rates”(適度な長期金利)の3つを挙げている。特に前者2つは“dual mandate”と呼ばれる。いずれにせよ、物価と実体経済を安定させることが金融政策の目的と言える。

長期的な下落トレンドを辿った
日本の「名目GDP/ベースマネー」比率

 物価と実体経済は名目GDPに集約される。この名目GDPのベースマネー(=銀行券発行残高+中央銀行当座預金+貨幣流通高)に対する比率が高ければ、金融政策は実体経済と太いパイプで結びついているとの解釈が一応可能となる。

 1970年のこの比率は、日・米ともに16倍強といずれも高水準にあった(図表1参照)。その後、1980年代に入ると日本の同比率は下落し始め、足元では4倍程度となっている。

「自然利子率の押し上げ」と<br />「実質政策金利の引き下げ」が欠かせない理由<br />――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券<br />チーフエコノミスト