西條 本当にそう思います。今は真面目さを「従来のことを真面目に踏襲する」ことでしか発揮できない状況にあります。そうではなく、状況と目的を考えて、常にぶれずに有効な方法を追求することに真面目になれば、すごく弾力性のある社会になりますし、行政も変わると思います。そのために僕はこういう考え方こそ、年号を覚えるより重要だと思っています。

 僕もいろいろ考えていたんです。地震があったとき、なんで自分は仙台の実家がつぶれたのではないかと思えたのに、何とも思わない人もいたのか。この違いは何かな、と。すると、僕はある仮説を持っていたことに気が付いたんです。それは、揺れの大きさと被害の大きさは相関するということでした。

 今までは大丈夫だったから起こらないだろうではなく、今までにない揺れだったから今までにない被害になるかもしれないと考えていたわけです。こういう仮説を持っていれば、マニュアルではなく、そのときの体感を元に自分で考えて行動することができます。何でもかんでも逃げれば生活できないので、そういう原理的な知恵がこれから未曾有の状況に対応するためには重要ではないでしょうか。

リーダーシップで災害は食い止められる

――「正解主義」の教育からの脱却が重要だというお話がお二方からありましたが、神田さんは日本には今後どんな教育が必要だと思われますか。

神田昌典さん

神田 1つにはリーダーシップの育成だと思います。アメリカでは、どういう場合にリーダーシップを発揮したら効果的か、学問として研究しているところがあり、1人のリーダーがどのような発言をするかで災害時の被害状況が全く異なることが実験結果で証明されています。

 まず実験では、2つの教室を用意し、それぞれで10人にテストを実施します。そこで、あえて隣で大きな叫び声と煙を出します。すると教室では、異変を薄々感じるわけです。そのとき、試験官が「CD(の音声)か何かかな」と言った場合、隣の教室を見に行って何か具体的な行動を起こす人はほとんどいません。対して、試験官が「何か大変なことが起こっているかもしれないね」と言った場合は、10人中4人ほどが向こうの教室に見に行きます。さらに試験官が「みんなで行って見てみよう」と再度具体的な行動を指示した場合は、10人中10人が隣の教室に行くという結果がでました。

 集団の行動において、特に日本人は周りを見てから動く傾向があります。そのなかで特にリーダーがどんな言葉づかいをするかによって、実際に大変な災害を生むのか、事前に食い止められるかが決まることが、この実験結果からも分かります。

 西條さんがおっしゃったように目的に応じて全員が機動的な行動をすべきですが、それを全体に浸透していく教育と、リーダーシップを発揮できる人の開発が必要でしょう。しかし僕は、そのようなリーダーはすでに日本に結構な割合でいるのではないかと思うんです。