決算書を読む力【その2】~損益計算書は、特別事項を把握しておく

 損益計算書は、単純に前期と比較することで、売上や原価、経費、利益の増減を把握することができます。

 また、金額だけでなく、売上に対する原価率や利益率についても比較が可能です。

 このため、「前期比較」がしやすい点が特徴といえますが、あくまで1年単位での比較なので、損益計算書を読む力を高めるには、(1)月単位・部門単位で比較する(2)特別事項を把握する、この2点が重要になります。

 (1)月単位・部門単位で把握する
  売上や原価、経費には季節指数と呼ばれる傾向が存在しています。
  売上であれば、繁忙期がいつ頃なのか、逆に閑散期があるとすればいつ頃なのか。それぞれ月単位で把握しておくことで、前期比較で得られた差異がより詳細に把握しやすくなります。

 また、原価についても、材料・商品の仕入需要が高まることで、値段が上昇する時期も特定しやすくなりますし、経費についても繁忙期で残業代の増加により人件費や、ガソリン代などが増えたりする時期の傾向がつかみやすくなります。

 一方で、部門単位での把握も重要です。

 損益計算書に表示されるのは、あくまで全社合計の数字です。

 ですので、複数の商品を取り扱っている場合、どの商品がどれだけ売れたのかまでは決算書では把握できません。

 また、複数の営業拠点や部署を設けている場合も同様です。

 実際にどの商品が売上に貢献し、どの部署が利益をたくさん生み出したのか。これらの部門単位での管理(これをセグメント管理と言います)を行うことで、より損益計算書の詳細を把握できるようになります。

 (2)特別事項を把握する
  損益計算書では、特別利益や特別損失という項目が設けられ、その年で発生した臨時の取引による損益を表示するようになっています。

 ただし、これらは固定資産の売却や除却など、会計上決められたルールにのっとったものに限定されています。 

 しかし、企業の現場では特別な需要や特別な経費が存在します。

 例えば、あるビアホールでは、2010年6月の売上が前年比で大幅に上昇したそうです。というのも、サッカーのワールドカップが開催されたことで、来店客数が大幅に伸びたことが原因だったからです。

 またある会社では、2年に一度、福利厚生費が大幅に増加します。というのも、2年に一度、全社員で海外旅行に行くためです。

 このように、単純に前期比較では得られない特別な需要や経費が会社には存在しています。

 大切なのは、これらの傾向を把握し、その情報を保管しておくことです。
そうしないと、売上予算の設定や目標利益を決めるにあたって、誤った情報をもとに予算設定が行われ、結果として間違った経営判断をしてしまいかねません。

 ここでも、決算書の数字を鵜呑みにせず、その数字が表す意味をひも解くことが重要です。