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カレのケータイをこっそり覗いたら……

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第9回】 2012年6月15日
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あなたは、人の世の出世ごとに関しては巧妙な計画を立てられるのに、情熱の問題では駄目なのね――、バルザックの『ふくろう党員』の一節より 
 

 ねえ、あなた――、と家内が部屋にやってくる。

 不思議なもので、連れ添った時間がそれなりに長くなると、この“ねえ、あなた”の抑揚で、何を言い出すのかがだいたいわかるようになる。発音がフラットなときは何か手伝えと言うことが多く、あなたの“た”が“たッ”になっているときは家内の機嫌が悪いときか私が怒られるときだ。

 ねえ、あなたぁ、と語尾が甘ったるく伸び気味のときはたいへんな注意が必要で、夏物の洋服が欲しいとか家電製品を買い換えたいとかとても素敵なバッグを見つけたとかどこそこに食事に行きたいと言い出す確率がエネルギー充填一二〇%で、とっくにあふれ出している。

 「ねえ、あなたぁ」
 「ダメだ」

 最近では、あなたぁと言われた瞬間に、条件反射で返せるようになった。

 「まだ何も言ってないじゃないの」
 「どうせあれが欲しいこれが欲しいどこかに連れてけと言うんだろう」
 「あら、どうしてわかっちゃったのかしら」

 わからいでか。

 ねえ、あなたぁの“たぁ”の音階が下がるときは、何かしでかしたときだ。たとえば、フランスで買って私が大切にしていたガレのランプに掃除機の柄をぶつけて割ってしまったとか、私が大切にしていたビデオの上に金曜ロードショーで放映した“宮崎アニメ”を重ね撮りして消してしまったとか、千疋屋で五〇〇〇円もした琵琶を私が留守のあいだにひとつ残らず食べちゃったとか、テーラーで仕立てた一着ン万円のワイシャツを他の洗濯物と一緒に洗ったら色落ちして“斑模様”にしちゃったとか、全部実話なのがとても悲しいのだが、こーいうことをしでかしたときに家内の“あなたぁ”は低くなる。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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きみは優秀なビジネスマンだ。周囲の信頼は厚く、友だちも多い。そして仲間にも頼られる。が、しかし……、恋人だけがいない。あなたはとても魅力的な女性だ。仕事も頑張って、自分磨きも怠らない。男友だちだってたくさんいるのに……、何故か恋人ができない。いつも元気で、前向きで、どんなことにも興味を持って挑戦する勇気があるのに、恋にだけは臆してしまう。そして、自信をなくしたて落ち込んだり。そんな男女がたくさんいる。イケテルカノジョを恋人にしよう。イケテルカノジョになって、素敵な恋をしよう。ノンフィクションライター降旗学が送る恋愛下手な人たちへの応援コラム。

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