小林製薬・小林一雅会長Photo by Hiroki Kondo

小林製薬はユニークな商品を次々と生み出すだけでなく、他社から買収した商品にテコ入れし、再び「売れ筋商品」として売り出すノウハウにも長けた会社として知られている。今回は商品開発やマーケティングについて、小林一雅会長に語ってもらおう。

大手との競合を避け、
小さな池で大きな魚を釣る

「小林は卸なのか、メーカーなのか」――。

 社長を務めていた頃しょっちゅう聞かれた。特に、卸の社長としてメーカーに行ったときには、嫌な目で見られたものだ。それも仕方ない。メーカー転換路線を拡大していけばどのみち、花王、ロート製薬、ライオンなどといった取引先との競合は避けられないからだ。

「二足のわらじ」に対する抵抗は、社内でもあった。

 卸部門にしてみれば、小林製薬がメーカーとして大きくなればなるほど取引先との関係がやりづらくなり、困る。特に多かったのは「医薬品の卸でありながら、なぜ日用品路線へ、しかもよりによってトイレ用品に行くのか」という声だった。

 ただ、私としては、トイレ用品に行く他、道はなかったように思う。

 なぜなら当時、大手企業はどこもトイレ用品などはやっていなかった。彼らとまともに競争しても勝ち目はない。なので私は当初から、大手企業などが勝負している大きな市場は避け、たとえ10億円しかない小さな市場でも、ユニークな商品を生み出すことでうちが8割のトップシェアを握れるなら、迷わずその市場を選ぼうと決めていたのだ。

 仮に目の前に、100億円の大きな市場が広がっていたとしても、うちが5位で5%のシェアしか取れないようなら捨てる。

「小さな池で大きな魚を釣る」をモットーに、私は会社を強力に牽引した。