日本郵船社長 宮原耕治
K.Sumitomo

 ばら積み船の国際的運賃指標であるBDI(バルチック海運指数)のみを判断材料にしている投資家からは、(好況下の高い運賃で契約できる)フリー船ではなく、荷主との長期契約が多いことに対してよくお叱りをいただく。つまり、「目の前の利益を追って、もっと稼げ」と言うことだ。

 しかし、大型ばら積み船の9割は長期契約を結ぶというポリシーは変わらない。(海運好況を生んだ)中国の資源需要はまだ続くと確信している。問題は、船のキャパシティがどうなるか。そして誰が運ぶかだ。

 韓国が増産体制に入ったうえに、中国の造船能力は2010年に現在の3倍まで拡大する見通しである。需給逼迫の現状から逆転し、供給過剰の局面になり得るのだ。中国のポリシーは“国輸国造”。自国の船で輸送し、その船は自国の造船所で造るという方針の下、相当な規模まで能力を拡張してくる。

 もう1つ注意すべきは、ブラジルの資源大手ヴァーレ(旧リオドセ)が超大型の鉄鉱石船14隻を自ら保有する計画を持っていること。海運会社に頼むのではなく、荷主自らが運ぼうとしているのだ。

 中東のオマーンやカタールなど、電力コストの安いエリアが製鉄やセメント製造の基地として伸びていく可能性など、海運会社にとって新たなビジネスチャンスも生まれている。しかし全体を見れば、10年以降にマーケットがある程度落ちることを考えて行動する必要がある。

 1隻当たりの利益はフリー船より少なくても、確実な利益を長期にわたって維持し、隻数を増やすことでトータルの利益を積み上げていく。(談)

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨仁)