北朝鮮はミサイルと見られる飛翔体を発射したPhoto:AP/AFLO

北朝鮮による
短距離弾道ミサイル発射の背景

 5月4日、10日と北朝鮮は相次いで短距離弾道ミサイルを発射した。その背景には、金正恩朝鮮労働党委員長の焦りがある。金委員長は自身の安全と金王朝の継続を確保するため、何とかしてトランプ大統領の関心を引いて、米国と直接交渉できるチャンスを狙いたいと考えていることだろう。

 ところが、ここへ来て朝鮮半島の情勢は急速に変化している。韓国は日米中から見限られ、文字通り“パススルー”されている。そのため北朝鮮は、米国との交渉を進めるにあたって韓国を利用することが難しくなった。今回の北朝鮮のミサイル発射には、「トランプよ、こちらを向いてくれ」という同委員長の焦りにも似たメッセージが込められている。

 2月にハノイで開催された米朝首脳会談で、金委員長はトランプ大統領に袖にされてしまった。これは完全な見込み違いだ。また、長引く制裁により、北朝鮮の経済は困窮を極めている。状況を打開するために金委員長は、利用価値のなくなった韓国を飛び越し、わが国と会う用意があることすら示し始めた。

 安倍首相はトランプ大統領と良好な関係を維持していることもあり、北朝鮮にとって米国との交渉を実現するためにも、対日関係は重要性を増している。

 これは、日本にとって大きなチャンスになるかもしれない。拉致等の問題を俎上(そじょう)に載せることができる好機になる可能性があるからだ。日本政府は冷静に情勢を判断しつつ、限られたチャンスを逃さない行動を期待したい。

急変する朝鮮半島を
取り囲む情勢

 現在、朝鮮半島の情勢が大きく変化している。最大のポイントは、韓国の国際社会における地位が急速かつ大幅に低下していることだ。日米中は韓国をほとんど見限った状況になっており、北朝鮮としては韓国の文大統領の利用価値が大きく低下している。