こだわり蕎麦屋めぐり
【第24回】 2012年6月19日 鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

学芸大学「遊山」――深夜にカウンター席で楽しめる、手挽きの十割蕎麦

バーラウンジを思わせるカウンター席に大人たちが憩う。旬の産地物料理が極上の蕎麦屋酒を教えてくれる。夜が更けるほどに「遊山」は隠れ家の輝きを増す。深夜に手挽き十割の「上がり蕎麦」を繰れる希少な店だ。

深夜まで憩える異彩の蕎麦屋
一見客も温かく迎えてくれる

 渋谷から中目黒、祐天寺、そして学芸大学を走る東横線沿線には、いい手打ち蕎麦屋が点在していて、蕎麦通たちが足繁く通っている。そのなかでも、異彩を放っているのが学芸大学駅近くの「石臼手挽き十割 遊山(ゆさん)」だろう。駅からはほんの2,3分も歩けば、その瀟洒な玄関を見ることができる。

17年も前に学芸大学にこんな蕎麦屋が誕生していたとは驚きだ。玄関戸を開けるとスポットライトがカウンターを照らす。もうそこには蕎麦屋酒に浸れる空間が用意されていた。

 店内はカウンター10席のシンプルな造作。スポットライトがカウンターに光を照射している。その光の中で、日本酒の片口や酒猪口、料理皿がぽっと浮かび上がる雰囲気はバーラウンジを思わせ、およそ蕎麦屋とは思えない。

 蕎麦屋だと思って訪れた客は、その雰囲気に一瞬、逡巡するかもしれないが、すぐにこの店の心地よさに馴染んでカウンターに肘を置くことだろう。この店に来る大人たちは酔って大声を上げることも無く、快い会話が交わされている。

夜の部は亭主の上野久雄さんが1人で厨房を切り回す。3年前からは客の要望で昼の部を設けて、3時まで女将の美代子さんが1人で担当する。昼のランチセットで日本酒を楽しむ客も多いという。

「遊山」の開店は1996年。その頃、都内には数える程度の手打ち蕎麦屋しかなかった。

 当時としては、こんなスタイルの店、――深夜まで営業し、しかも酒と美味い料理を味わいながら、締めに手挽きの十割蕎麦を手繰る――、は当時としては画期的だったといえる。

 もちろん、今でも「遊山」のような蕎麦屋は希少で、その人気は衰えを知らない。

「大袈裟な言い方をすると、開店した頃が一番客が来てすごかったですね」と、当時を振り返るのは亭主の上野久雄さんだ。そのくらい「遊山」のインパクトは強かったようだ。それこそ客たちは隠れ家を発見した子どものように、こっそりと通いだしたに違いない。

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鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

大手広告代理店で営業局長やプロモーション局長を歴任後、東京・神田須田町で手打ち蕎麦屋「夢八」を開店する(現在は閉店)。現在は企業経営コンサルタント、蕎麦コンサルタントとして活躍中。著書に『こだわり蕎麦屋の始め方』(ダイヤモンド社)がある。
◎ブログ:蕎麦の散歩道


こだわり蕎麦屋めぐり

酒と料理と極上の蕎麦。思わず誰かを連れて行きたくなる、五つ星のもてなしが楽しめる手打ち蕎麦屋。蕎麦が美味いのは当たり前、さらにはそこでしか味わえない料理ともてなしがある店ばかりを厳選。付き合いや接待に良し、大事な人と大事な日に行くも良し。店主がこだわり抜いた極上店の魅力とその楽しみ方を紹介する。

「こだわり蕎麦屋めぐり」

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