気候変動が地球環境にもたらす負荷は深刻である。傍観する猶予はないはずだが、政財界の腰は重い。ただし、明るい兆しもある。若者たちが声を上げ、その状況を変えようと行動を始めている点だ。それを単なる雑音として片付けることもできるが、過去の社会運動の歴史を見ても、その中核を担っていたのは若者である。筆者は、企業はこうした声に耳を傾けるべきだと主張する。


 生物学上の数ある不思議の一つだが、子どもと大人では音の聞こえ方が異なる。10代の子どもと若者だけが聞き取れる周波数があるのだ。

 最近、多くのビジネスリーダーを含む大人たちより、20歳未満の人たちのほうがはるかにうまくとらえている、ある高周波音がある。気候科学者の鳴らす警鐘だ。

 2019年1月に16歳になったばかりのスウェーデンの若者、グレタ・トゥーンベリのことを考えてみよう。

 トゥーンベリは昨年、気候変動対策の欠如に抗議すべく、「存在しないかもしれない未来のために勉強するのは意味がない」と言って、登校を拒否した。その数ヵ月後には、世界経済フォーラムでビジネスリーダーたちに対し、即座に行動を起こすよう要求。ポーランドで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)では、国連事務総長とその他の参加者に、「あなた方は、私たちの目の前で(子どもたちの)未来を奪っている」と訴えた

 トゥーンベリが始めた活動は広がりを見せ、その取り組みによって彼女は、ノーベル平和賞にノミネートされた。

 欧州連合(EU)の本部があるブリュッセルでは、毎週数千人のベルギーの若者がデモ行進をしている。また、3月15日には、史上最大規模と目される若者主導による抗議行動が行われ、世界300都市の推定160万人もの学生が気候変動対策を訴え、授業をボイコットして行進した。

 私はニューヨークのデモ行進に行ってみたが、そのエネルギーはすさまじかった。私と同僚は10代の若者のグループに「何らかの対策を取るべき旧世代の人」呼ばわりされたが、それを悪くは思わなかったほどである。

 これだけではない。若者の新たな組織であるサンライズ・ムーブメントは最近、カリフォルニア州のダイアン・ファインスタイン上院議員と環境政策への支援について幾分激しい議論を交わした。ある10代のグループは、若者を気候変動から守れなかったとして、米国政府を訴えた

 若手政治家も声を挙げている。29歳のニューヨーク州下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテスが、在職から数ヵ月間で成し遂げたことを考えてみよう。米国最年少女性議員となった彼女は、「グリーン・ニューディール」という旗を掲げて、気候と不平等に関する幅広い目標を示し、気候変動に関する議論のあり方を大きく変えた。