ワシントンでの米中通商協議 合意至らず交渉継続となった。劉鶴副首相(左)とロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表 ワシントンでの米中通商協議は合意至らず交渉継続となった。劉鶴副首相(左)とロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表 Photo:REUTERS/AFLO

合意できなかった
米中の閣僚級の貿易協議

 5月9~10日、米国・ワシントンで開催された米中の閣僚級の貿易協議にて、両国は合意することができなかった。両国は交渉が建設的であり協議を継続すると表明しているものの、次回交渉の日程などは決まっていない。今回の交渉で、両国の溝の深さを浮き彫りにする結果となった。

 今後の展開について楽観は禁物だ。

 当初、合意間近とみられていた閣僚級の交渉が合意に至らなかったことは大きい。今後、米中はトップ同士の会談で妥結を図ることになるだろうが、交渉は一筋縄にはいきそうにない。特に、有力企業に対する政府の補助金の扱いなどは、中国にとって国家資本主義の根幹に関わる問題だ。そう簡単には譲歩するとは思えない。

 今回の交渉の経緯の背景には、中国、習近平国家主席の思惑があったとみられる。経済改革を重視する交渉責任者の劉鶴副首相は、米国に妥協案を示し合意にこぎつけたかったとの見方が有力だ。しかし、土壇場になって習近平国家主席は「全責任を取る」として、副首相の譲歩案をひっくり返したようだ。

 足元で中国経済が想定以上に減速し国内の不満が高まっているとみられ、習主席が米国に譲歩すると“弱腰”との批判が増える。批判や不満を回避し権力を維持するために、同氏はどうしても、対米交渉で強硬路線を取ることが必要になっているとみられる。

 これは、“国家資本主義”を重視し、補助金政策にこだわる中国国内の保守派の主張が、改革派を上回ったことを意味する。中国が、米国の求める補助金の削減などに応じることはできないだろう。