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だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

ビジネス優先で選手を“商品化”。スポーツへの尊敬なき日本の「新興エージェント」たち

谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]
【最終回】 2009年4月20日
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石川選手はなぜ
マスターズに出場できたか

 「17歳のプロゴルファー」という話題性だけでなく、実力や雰囲気などにも魅力を感じさせるものを持っているのであろうが、それにしても「特別枠」とはいえ石川遼選手のマスターズ出場には驚かされた。

 報道によると、マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルGCのビリー・ペイン会長は、石川選手を特別枠で招待した理由について、「子供たちのあこがれるヒーロー誕生への大きな一歩になると考えた」と述べ、「石川が日本で活躍し、その成功が続いていけば、それは世界へ広がるはず」と石川選手に期待まで寄せたという。

 ペイン会長の言葉を疑うわけではない。しかし、ペイン会長の独断で石川選手を招待したとは思われず、裏でペイン会長を動かした何者かがいたのではないか、と勘ぐっても不思議ではなかろう。

 たしかに、その何者かが存在した。それは、世界的にスポーツビジネスを展開しているIMG(インターナショナル・マンジメント・グループ)である。

 IMGのビジネス全体については後で触れるが、ことゴルフに関していえば、世界のゴルフ界に決定的ともいえる影響力を持っている。タイガー・ウッズをはじめ世界的な有力選手を多くクライアント(マネジメント契約)に抱えているばかりでなく、国際的なゴルフイベントを主催したり、選手の育成まで手掛けている。

 そのIMGと石川選手は、今年1月に日本国内を除く海外での活動についてのマネジメント契約を結んでいた。そして、クライアントである石川選手のマスターズ出場をIMGが仕組んだというわけである。

 予選落ちで終わったものの、「最年少のマスターズ挑戦者」として石川選手の存在は、世界に知れわたったのは間違いない。それは同時に、IMGの力を改めて知らしめることにもなった。

アスリート・マネジメント
の草分けとなったIMG

 1960年にIMGを設立したマーク・マコーマックは、プロゴルフのアーノルド・パーマー、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラウスと次々にマネジメントの契約をし、「ビッグスリー」として世界のゴルフ界に売り出した。

 そのトップアスリートのマネジメントという独自のビジネスでマコーマックは、世界のスポーツ界から注目される存在となった。

 その後、マコーマックは、アスリート・マネジメントと連鎖させるかたちでスポーツイベントのプロデュースや運営、テレビ放送権の販売など多角化を図るとともに選手の育成にも乗り出した。

 アメリカ・フロリダ州にある拠点「IMGアカデミー」は、東京ドーム16個分以上という広大な敷地を有し、ゴルフ、テニス、バスケットボール、野球、アメリカンフットボール、サッカーなど多種目わたる選手育成を行なっている。「IMGアカデミー」からテニスのシャラポア、錦織圭、ゴルフの宮里美香選手などが出ており、世界を舞台に活躍している。

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谷口源太郎 [スポーツジャーナリスト]

1938年鳥取市生まれ。講談社、文芸春秋の週刊誌記者を経て、フリーランスのスポーツジャーナリスト。スポーツを社会的視点からとらえた批評をてがける。市民の立場からメディアを研究する「メディア総合研究所」会員。フェリス女学院大学非常勤講師。著書「スポーツを殺すもの」(花伝社)、「巨人帝国崩壊」(花伝社)、「日の丸とオリンピック」(文芸春秋)など。


だれが「スポーツ」を殺すのか ~暴走するスポーツバブルの裏側~

底の浅いスポーツ報道に高騰する放映権料、エージェントの暗躍やスポンサーと協会の利害関係、そしてスポーツを利用する政治家まで。スポーツは純粋な「競技」から、完全に「ビジネス」と化した。スポーツを殺したのは一体誰なのか。暴走するスポーツバブルの裏側を検証する。

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