シリコンバレーを中心に起業熱が高まりを見せたこともあったが、実際には、米国で起業する若者の数は減り続けている。特にミレニアル世代には、その傾向が強い。筆者は、貸与奨学金がその原因の一つだと指摘する。大きな負債を抱えた状態でさらなるリスクをとるのは難しく、給料の良い会社で働き続けたいと思うのは理解できる。この状況を打破するには、雇用者と資本提供者による支援が必要だという。


 ミレニアル世代(まもなく成人世代の最大の層になる)の60%までが、自分は起業家だと思っている。だが、実際に自営業を成り立たせているのは4%未満である。

 起業する若者の数は、1990年代半ばからじわじわと減ってきている。1996年には、若者による起業は新興企業の35%を占めたが、2014年には18%にまで落ち込んだ。

 実際、過去40年以上、起業活動に顕著な増加は見られず、1977年から2016年までに、米国の全企業の中で新規事業の比率は29%減少した。この不振の背後にある理由をめぐって、経済学者や政策立案者の間では議論があるだろうが、どの正規分布曲線もそうであるように、裾の狭さに明白な答えがある。

 米国では、4400万人以上が総額1兆5000億ドルを超す貸与奨学金の負債を抱え、それはクレジットカードの負債総額よりも5210億ドル多い。ますます大きくなる負債の危機感と鈍い賃金上昇率が相まってプレッシャーを増大させ、若い世代に不安を植えつけてしまったようだ。簡単に言うと、彼らは新しいものを創り出そうと試みるときに伴うリスクを、とても嫌がるようになったのだ。

 大学生の大多数(ほぼ70%)が平均2万9800ドルの負債を抱えて卒業する昨今、この荷を軽くするために給料のよい仕事に就く以外のことを考えるのは、よく言っても無責任に見えてしまうかもしれない。だが、着実に負債を返済できるような仕事に就けても、返済は長期間にわたる可能性が高い。シチズンズ・フィナンシャル・グループの調査では、貸与奨学金を借りた人の60%が40代まで返済を続ける見込みだ。

 授業料の高騰を正常化することは長期的な解決策かもしれないが、短期的に見ると、イノベーションとベンチャー企業の創業に再び火をつける力があるのは、大半の個人や法人を経済的に支援できる人々、すなわち、雇用者と資本提供者である。