夢を見ない日もありますが、実はそれは見ないのではなく覚えていないだけで、本当は見ているのです。脳は夢を生成しているのです。

 専門家の中には「人間が覚えている夢は、その日見ている夢の1%程度でしかない」といっている人もいます。そのくらい私たちは毎晩、膨大な量の夢を見ているのです。

頭の中がよみがえる!
夢は記憶の再生工場

 脳は夢の生成過程において、何をしているのかというと、私たちの記憶を再生していると考えられています。これも脳科学者たちの研究による見方です。私自身の勉強体験からしても、本当にそのとおりだと思います。

「夢とは記憶の再生である」と脳科学者たちは指摘します。私流に言い換えれば、「夢は記憶の再生工場である」となります。

 そして、この夢の再生作業に対して、寝る少し前に新しい“素材”を提供しようというのが、私の記憶術のキモにほかなりません。

 私たちが眠っている間の脳には、たとえば30年生きた人は30年分の素材が、40年生きた人は40年分の素材が再生工場の倉庫に積まれています。それらは全部古いものです。そこで、新しい素材を提供すれば、その分、新しい記憶の再生、夢の生成を行うはずです。

 私たちにとってありがたいことは、覚えている夢というのは、比較的新しい記憶から生成されたものだということです。

 たとえば、20年前に住んでいた家や街並みが夢に出てくるとか、だいぶ前に亡くなった人が登場してくるとか、昔の記憶がよみがえる夢を見ることがあると思います。ただ、覚えているのは、目覚めたときの一瞬で、顔を洗っている頃にはもう忘れていることが多いでしょう。

 ところが、前日の会議のシーンが出てきたり、2日前につくった企画書が出てきたり、あるいは1週間前に出会った素敵な女性や男性が出てきたりすると、案外、鮮明に覚えているものです。

 会社に行って、「今朝、夢に君が出てきたよ」といった会話をすることがありますよね。それは、夢の素材が新しいから鮮明に覚えていることと、もう一つは素敵な夢だとずっと覚えていたいという心理も働くのかもしれません。

 ここです。ここに、夢を自分の意思で利用しようというアイデアが浮かんできたのです。私はその考えに自信を持つために、そのときから睡眠と夢のメカニズムをきちんと勉強し、そして実践してみることにしたのです。