面談の目的は、リーダーが、メンバーのニーズに応えた働きかけをするための「ニーズの収集」ですが、私は読みながら、これはメンバーにとっても意味ある面談なのだと直感しました。

 おそらく、メンバーはリーダーの質問に答えながら、無意識の自問自答をするでしょう。「自分のやりたいことは何なのか」、「今まで、何に価値を置いて生きてきたのだろうか」と。

 そして、自分の欲求や価値観に照らして、「今、自分は何をなすべきか?」と思いを膨らます人も稀ではないと思います。

 ああ、こういう面談をすることも、内発的動機づけの支援行動の一つなのだ。そんな思いを巡らしながら、その場面を何回も読みました。

セルフ・コントロールとはなにか

 外発的動機づけと内発的動機づけは、両方とも大事な動機づけなのですが、MBO-Sではとくに内発的動機づけの必要性を強調します。

 外発よりも内発が、より持続可能なヤル気を生むと考えるからです。

 私はドラッカーの「セルフ・コントロール」という言葉を、「内発的動機づけによる意欲的、かつ自律的な行動」と解釈し、内発的動機づけの面積拡大を研修などでは訴えています。

 ではここで、MBO-Sをキーワードを使って再度まとめてみましょう。

 「マネジメント」を目的とし、

 道具として「オブジェクティブズ(目標)」を使う。

 リーダーは動機づけを行って、メンバーそれぞれを「セルフ・コントロール(自己統制)」の状態で仕事に取り組むように支援する。

 すると目標へのコミットが高まり、業績は伸び、働く人も金銭的にも精神的にも充足できるようになる。

 以上、かなり駆け足で、MBO-Sの概要を見てきました。

 人と仕事をうまく結びつけるためにはチャレンジ目標が必要であり、目標設定や達成活動に際してはセルフ・コントロールの力を最大限に引き出すこと。

 MBO-Sのコンセプトは以上です。でも、本当に、普通の人がセルフ・コントロール状態になれるのか。MBO-Sは理想論ではないのか・・・・・・。

 次回は、赤字続きの中小企業を9ヵ月で黒字に持っていったストーリーを参考に「目標管理は理想論なのか?」について論じていきたいと思います。


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