1.MBO-Sは「オープン・システム」で展開する

 ここでもう一度、連載1回目でお話しした「目標管理による人事評価制度」で失敗した中堅企業の話をします。

 すでに述べたように、この会社の人事制度の問題点の一つは、「人事評価制度をモチベーションアップの仕組み」と捉えたことでしたが、もう一つ、「個人面談に頼り過ぎたマネジメント」という問題点があります。

 人事部の人たちは、業績とヤル気の向上のためにもっとも重要な押さえどころは個人面談だ、と考えました。そして、年2回、30分以上の時間を使って面談するよう、全部署に呼びかけ、面談の実施状況はアンケートで測定することにしました。

 アンケートを取ってみると、面談は確実に行なわれており、その限りでは人事部の思惑通りの結果が得られました。しかし、社員は元気がなく、職場全体にも以前のような活力が感じられません。
人事部は悩みました。「個人面談→ヤル気アップ→業績向上」という仮説に問題があったのではないか……と。

 相談を受けた私は、「その通りです」と答えました。

個人面談は必要なのだが…

 確かに、個人面談にも利点はあります。
リーダーがメンバーに関心と愛情を持ち、真摯な態度で面談すれば、メンバーの責任感や意欲は刺激されるでしょう。

 また、一対一でしか話せないこともあります。節目のセレモニーとしても個人面談は有効です。
だから、個人面談は否定しないし、必要だと思います。

 『黒字浮上!最終指令』でも、「この会社はなぜ万年赤字なのだろうか?」というテーマで、社長は係長級以上の社員との面談を実施します。
『もしドラ』でも、すでに紹介したように「お見舞い面談」という方法で、個人の悩みごとなどが話し合われます。

 しかし、それらはいずれも、人間と人間との心の距離を縮めることを目的とした面談であり、たとえ面談がうまく行なわれたとしても、それだけで業績が向上するわけではありません。