本質は統一通貨を
使うなかでの不均衡拡大

 6月17日のギリシャの再選挙で緊縮財政派が過半数を占め、組閣も行なわれたことで、足元、安堵感が漂っている。ただし、これで問題が収まったものではない。

 欧州問題の本質は、統一通貨ユーロを使用するなかで必然的に生じ得る各国の不均衡拡大にある。筆者が長らくストーリーラインとして議論してきた「ソブリン・ワールドカップ」は、基本的に経常収支の不均衡によるものだった。しかも、その不均衡を調整する為替機能が不在という、制度的欠陥が原因となっている。

 欧州域内の不均衡は、第一ステージとして経常収支の不均衡、すなわちドイツの黒字と南欧を中心とした諸国の赤字拡大の形で生じた。本論のテーマは、その不均衡が経常収支段階だけでなく、第二ステージとして金融面の不均衡に波及した点にある。

2つのステージの不均衡

 以下で、欧州の不均衡構造を概念図で考えることにしよう。そもそも、異なる経済の「実力」をもつ国々が存在するにもかかわらず、単一の通貨を使えば、競争力のある国は経常収支上でますます黒字になるが、競争力に劣る国は経常収支赤字が拡大する。これは、当たり前のことでもある。

 通常、こうした不均衡を調整させる機能を為替が担い、黒字国の通貨が上昇し、赤字国の通貨が下落することで均衡に向かう。すなわち、競争力に劣る国は為替を切り下げ、いわば、「自国製品を安売り」することで黒字を確保し、自動的に調節を実現する。

 しかし、単一通貨の場合、そうした調整機能は働かない。したがって、為替調整に頼らず競争力を改善させようとすれば、自国の物価水準自体を切り下げる必要が生じる。