「脳」が新たな時代の資本になる

  そもそも資本主義とは何でしょうか?

  古典的な定義で考えると、資本を持った人が利益をあげることで、社会全体が富んでいくというモデルです。
  その昔、資本は土地、工場、農地であり、その資本を持てるのは、ごく一部の資本家に限られていました。そして、時間単位で労働者を雇い入れ、富を生み出していきました。
  20世紀においては、こうした資本主義の一方で、共産主義という考え方もありましたが、いまのところ資本主義が一応の勝利を収めたことになっています。

  しかし、こうした資本主義の勝利も、長くは続きません。
  インターネット時代の到来によって、少なくとも、前述のような古典的な資本主義の定義は、大きく崩れるでしょう。
  なにしろ、ビジネスを始めるのに大がかりな資本は一切いらないのですから。

  結果、資本は人の耳と耳の間にあるもの、つまり「脳」が新しい時代の資本になります。要するに、新しいビジネスモデルを描くことのできる頭脳があれば、誰でもビジネスを立ち上げ、資本家になれるということです。

  このように、誰もが個人ベースで、簡単にビジネスを立ち上げられるようになる一方、いままで資本主義社会を支えてきた大企業は、新しい市場を創ることがなかなかできません。

  なぜでしょうか。
  マーケティング・リテラシーが欠けているからです。
  インターネットが社会インフラとなった現在でも、工業化時代に全盛だったマーケティング手法だけに頼ろうとするのには、無理があります。ダイレクトマーケティングの手法を知らずに、このインターネット時代にモノを売ろうとするのはかなりの遠回りをしているのです。

  インターネットがここまで普及する前の時代、マーケティングと言えば、マス媒体を核としたマスマーケティングが主体でしたが、インターネット時代には、情報発信者が個々人から直接情報を集め、より効果的に消費者ニーズを把握して商品・サービスの販売につなげていくダイレクトマーケティングが主体になってきます。

  ところが、現在の企業における幹部の多くは、テレビ広告全盛期にビジネスの経験を積んできている人ですから、マスマーケティングは理解できても、ダイレクトマーケティングの手法にはなじみがないのですね。