金融政策を論じる際に参照する指標には、いくつかのものがある。それらは、量的な指標と、価格に分けられる。量的な指標の基本は、マネタリーベースとマネーストックだ。これらについて説明しよう。

マネタリーベース、マネーストックとは

 日本銀行のホームページにある解説で、マネタリーベース、マネーストックは、つぎのように説明されている。

「マネタリーベース」とは、「日本銀行が供給する通貨」のことである。具体的には、市中に出回っている流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計値である。すなわち、

 マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

 これは、中央銀行と政府が経済のそれ以外の部門に対して持つ負債だ。

「マネーストック」とは、通貨保有主体が保有する通貨量の残高(金融機関や中央政府が保有する預金などを除く)である。通貨保有主体には、居住者のうち、一般法人、個人、地方公共団体・地方公営企業が含まれる。「一般法人」とは、預金取扱機関、保険会社、政府関係金融機関、証券会社、短資等を除く法人だ。

 これは、金融機関が経済のそれ以外の部門に対して持つ負債だ。

 マネーストック統計では、「金融機関」の範囲の差と、預金の種類の差によって、M1、M2、M3、広義流動性といういくつかの指標が定義されている。M1とM3では、対象金融機関は、ゆうちょ銀行を含む広義の預金取り扱い機関とされている。また、M3では、定期預金も含まれている。

 詳しい説明は、日銀ホームページにある「マネーストックの解説」を参照。

 以上の定義は、時代によって変化する。「クレジットカードやトラベラーズチェックはマネーストックに含まれるか?」という問題は古くから議論されてきた。現代では、電子マネーの取り扱いが問題となる。

 なお、マネタリーベースは、かつて「ハイパワードマネー」と呼ばれていた。「強制通用力を持つ貨幣」という意味だ。そして、「マネーストック」は、「マネーサプライ」と呼ばれていた。古い教科書などには、この名称が用いられている。現在の名称は、2008年6月以降のものだ。「貨幣供給量」というのは、マネーサプライの訳語だ。この言葉もしばしば用いられる。