進むトランスネーションの先にあるのは
どの国に属しているかで決められてしまうある種の“色づけ”

 昨今、欧米企業の間では「グローカル」に続くキーワードとして「トランスネーション」という言葉がささやかれ始めています。

 グローカル(グローバル+ローカル)とは、外国にいくつかのミニ本社を設け、グローバルなよさを残しつつローカル化すること。日系企業が今日とっているのはほとんどの場合がこのグローカル化です。

 これに対してトランスネーションとは、さらに国家を機能別に分けて、それぞれの得意分野に機能を分散していくことです。

 たとえば「労働コストが安く、英語を話せるフィリピンには世界中の顧客対応電話を集約し、部品サプライヤーが集積するタイでは各国に輸出する製品の生産拠点を置く」、などです。

 シンガポールはトランスネーションの重要性に早くから気づいており、この時代が本格的に到来したあかつきには主導国になろうとしています。そのため、グローバル企業の研究開発所やハイテク企業、環境企業の誘致に躍起になっているのです。

 トランスネーション化が進むと、国によってある種の色づけがなされてしまうため、どの国に属しているかがことのほか重要になります。つまり、“頭”になるのか“手足”になるのかが明確化されてしまうわけです。

 さて、そうなると気になってくるのは「分業が進み、格差が広がった競争し烈な環境でも勝てる人材像とはどのようなものか?」という点です。次回のコラムから、この点についてじっくり考えていくことにしましょう。

次回は7月12日(木)に配信予定です。