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小説じつは…経済研究所

じつは、経営のプロにも、デフレはそれほど知られていない

佐々木一寿 [グロービス出版局編集委員]
【第3回】 2012年6月29日
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麹町経済研究所のちょっと気の弱いヒラ研究員「末席(ませき)」が、上司や所長に叱咤激励されながらも、経済の現状や経済学について解き明かしていく新連載。第3回は、末席がアパレル企業のCFOに、デフレ下の戦略を伝授します。

今日も嶋野主任の気まぐれに…

 窓越しに外を眺めると、皇居の上空を飛ぶ鳥が、風に大きく煽られている。

 「今日はずいぶん強風だな。あれ…、もしかして…、しまった!」

 マネジャーは思わず、ちっ、と舌打ちをした。

 末席はそれを遠目に見ながら、今どき、本当に舌打ちする人っているんだな、と物珍しげにしていると、マネジャーが血相を変えてこちらに向かってくる。

 「末席君、このあとの予定は何か入ってる?」

 「ええ、所長とミーティングで、MBOの予定ですが」

 「じゃあ、空いてるわけだな」

 「あの、ですから、次期クオーターのMB…」

 「大丈夫、大丈夫。MBOなら、所長と僕でやっておくから」

 自分のMBOなのに、他人がやっておくなんてことがありうるのか。なんつー、強引な。驚いた末席は、ビックリした拍子に、目標管理シートをマネジャーに渡してしまった。*1

*1 MBOの概念は、ドラッカーの「Management By Objectives and Self-Control」という言葉にまでさかのぼり、自己統制のためにMBOというものが必要になるという主旨のことが語られている。cf. " The Practice of Management "(by Peter F. Drucker,1954)

 「これを読んでもらって、所長がこの数字に、まあ20%くらい上乗せすれば完了だろう」

 たしかに、すべてはシートに記入済みで、それ以外のものが特段に入る余地はない。実際、双方が目標数値調整でちょっともったいぶったあとに、「合意に至ったね、頑張ろうね」という“お約束”の儀式に多くの時間は費やされる。マネジャーが言っていることは、じつは、時間的な効率性を考えても合理的かもしれない。だが、しかし…。末席は、テーマパークの裏側を見てしまった子どものような、複雑な心境になった。

 「ちょっと! せめて10%以内まで粘ってください。それはそれとして、マネジャー、なにか緊急のことでもあったんですか?」

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佐々木一寿 [グロービス出版局編集委員]

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業。大手メディア複合グループの出版部門勤務、報道系編集デスクを経て、グロービス入社。現在は、同社出版局の編集委員として、書籍・教材をはじめとする各種著作の企画・構成・執筆を担当。主に「グロービスMBA」シリーズ、「グロービスの実感するMBA」シリーズ(ともにダイヤモンド社刊)、「グロービスMBA集中講座」シリーズ(PHP研究所刊)の編集・執筆に携わる。


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