生坂政臣・千葉大学医学部付属病院総合診療科科長生坂政臣・千葉大学医学部付属病院総合診療科科長 Photo by Hiromi Kihara

名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第12回。「謎の病気」に苦しむ患者の“駆け込み寺”的な存在として有名な、千葉大学医学部付属病院総合診療科の生坂政臣医師を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

名医になるならしたほうがいい
いろいろな病気経験

「総合診療医ドクターG」(NHK)の出題者として全国区の知名度を持つ生坂政臣先生(千葉大学医学部付属病院)の“ひそかな自慢”は、「いろいろな病気にかかった経験がある」ことだ。

「例えば、他人の痛みって100年でも我慢できるんですよ。でも自分で病気になると、『あー、あの患者さんつらかっただろうな』と共感できるし、対策も具体的に伝えられます。それが大事です。医者を目指す人は論理的に考える力は蓄えていますが、加えて、想像力とか共感力、患者さんになり切る力…立場に立つんじゃなくてね、これがないと良い医者にはなれないと思いますね。

 すべての病気を経験するのは無理だし、いくつ命があっても足りませんが(笑)。考えてみると医者って、人のふんどしで相撲が取れる唯一の専門家なんですよね。自分で経験せず、人の経験を見るだけで診断したり、アドバイスしたりできる。だけど家を建てたことがない人が建築家にはなれないし、運転したことがない人が、自動車評論家にはなれない。

 だから本当にいい医者になりたいなら、いろいろな病気を経験しているということは重要だと思います。僕がもしがんになったら、がんを経験したお医者さんに診てもらいたいです」